美男2
~Another  Story~

「シヌの彼女」
*51*


「ミニョ、試写会、上手くいってるかな?大丈夫かな?今日は、ちゃんとやっているよね?」

時間は遡り、ミニョを送り出した合宿所のリビングには、メンバーの姿があった。
ジェルミは、キッチンのシンクで、食べ終わった食器を洗っている。

「その言い種だと、前に、何かあったみたいだな?」

リビングのソファーにくつろぎながら、テレビを観ていたミナムが聞く。

ジェルミ「ミニョ、ユ・ヘイssiに、女だとバレて、いじめられてたんだよ。」

ミナム「はぁ~ん、やっぱりね。最初の頃、ユ・ヘイが言ってたもん。『アンタなんか、大キライよ。だって、私の大キライなアンタの妹に顔もそっくりだし、余計にムカつくわ。』ユ・ヘイは、テギョンヒョンのこと、本気で惚れてたみたいだし・・・そのテギョンヒョンのそばにいるミニョが許せなかったんだろうな・・・女の嫉妬って、ホント、恐いわぁ・・・」

記憶のないテギョンは、勿論、覚えているわけなく、不機嫌そうに、眉間に皺を寄せて、口を尖らしている。

シヌは、『テギョンにまで、突っかかるなよ』と、ミナムに対して溜め息を吐きながら、話を続ける。

「・・・そのユ・ヘイが、試写会の日に、女の格好をして出るように言ったらしく、ミニョは、女の格好で試写会の会場に行ったんだよ」

ミナム「はあ、さすが、ユ・ヘイ。卑怯な手を使うな・・・で?」

ジェルミ「ミニョは、女の格好で、試写会に行き・・・シヌヒョンが、危機一髪のところで、助けて、その場では、なんとか収まったんだけど・・・カッコ良かったな・・・あのときのシヌヒョン『オレの彼女です』って、ミニョ抱き締めてさ。」

強烈なフラッシュバックに、テギョンの目が、突然、大きく見開かれる。

「俺が見えないところにいるなって言っただろ!」

静寂な真っ暗な暗闇の中、自分の声が響き渡る。
真っ暗な会場が突然、明るくなる。
目の前には、涙をいっぱいに溜めながら、悲しそうな目でテギョンを見つめるミニョの姿。
会場内はざわついていて、騒ぎを止めないといけないのに、自分は、立ち尽くしたまま、動けない。
そのとき、ミニョの身体がぐらりと傾き、男の胸に飛び込む。
ミニョを抱きかかえたシヌが、テギョンをしっかりと見据えていた。
記者が集まり、シヌに矢継ぎ早に質問を浴びせる。

『オレの・・・彼女です』

なんとか、その場から逃がそうと、自分のジャケットを脱ぎ、シヌに手渡す。
ジャケットを被ったミニョを抱きかかえながら、自分の横を通りすぎるシヌ。
そのとき、キラリと光り、何かが、床に落ちた。
たくさんの人に踏みつけられ、無惨にも壊れたリボン型のヘアピン。

それは、ミニョの部屋にあった、同じリボン型のヘアピンだった。


ミナム「ふーん、心配しなくても、今回は、大丈夫。ミニョにとって、最後の仕事だからね。上手くやってるさ」

ジェルミ「最後の仕事?」

ミナム「そう、試写会で、ミニョは、芸能活動を無期限休止にするから。だから、此処には、もう帰ってこないよ。」

ジェルミ「え??ウソ・・・」

ジェルミが、ドタバタと階段を駆け上がる。

シヌ「ミナム、本当なのか?」

ミナム「ホント。今日、試写会が終わったら、そのまま、ミニョを連れ出す。」

シヌも、階段を上がる。
下の階に残ったのは、テギョンとミナムだけ。
テギョンは、腕を組み、口を尖らしながら、何かを考え込んでいる。
ミナムは、テギョンを一瞥すると、階段を上がった。

ジェルミとシヌが、ミニョの部屋のドアを開けると、部屋は、綺麗に片付けられてあり、ミニョの鞄とキャリーケースが置いてあった。

「オレ、行ってくるから・・・」

ミナムが、ミニョの部屋から、鞄とキャリーケースを持ち出す。

「待って、オレも行く!連れてって!」

ジェルミが、ミナムの前に立ち塞がる。

「ダメだ、騒ぎになる!」

「大丈夫だって。応援とか言って、上手くやるし、ミニョに会って、『お疲れ』って、『よく、頑張ったね』って言ってあげないと!そのまま、お別れなんて、寂しいじゃん!ね?シヌヒョン!」

「確かにな」

八重歯をみせ、ニヤリと笑うシヌ

「決まりだね」

ニッコリ笑うジェルミ

「もう、勝手にしてくれ」

呆れながらも、ミナムは、笑っていた。




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サブタイトルに、深い意味はございませんので、悪しからず。
テギョンさんの記憶を、これから、徐々に、ゆっくりと、鮮明に、引き出していますので、もう少しだけ、耐えてください。