美男2
~Another Story~
「後悔をしないように」
*44*
ソファーで眠っていたミニョが、身体をモゾモゾと動かしている。
「ん・・・?」
身体を起こすと、首を傾げながら、キョロキョロと、辺りを見回す。
頭は朦朧として、ズキズキと痛いし、頬も熱い。
ココが、合宿所だと、いうことに理解するのに時間が掛かり、なぜ、合宿所にいるのかを、ぼんやりと、考えているミニョには、キッチンにいるテギョンの姿は見えていない。
喉が、乾いたな・・・
ふいに、思い立ち、冷蔵庫に、ヨロヨロとした足取りで向かうと、コツンと、頭に何かがぶつかる。
なんだろう・・・と、頭を押さえながらミニョが、上を見上げると、テギョンの顔が見えた。
「あ、あ、テギョンさん、ごめんなさい・・・気づかなくて・・・」
驚いたミニョが、慌てて、頭を下げる。
「相当、酔ってるみたいだな・・・」
呆れたようなテギョンの声に、バツが悪そうにミニョは、肩をすくませた。
酔いで頬を真っ赤にしているミニョに、テギョンが、小さなため息を吐いた。
「そこに、座れ」
カウンター席に、おとなしく座るミニョ。
テギョンは、蜂蜜の瓶を取りだし、スプーンで蜂蜜を掬い、マグカップに入れ、お湯を注いだ。
「ほら、酔い醒ましだ。飲めよ」
「あ、ありがとうございます」
ミニョが、マグカップを両手で包み込むように、ホットハチミツを一口飲み、柔らかな表情を浮かべる。
「落ち着いたか?お前に、聞きたいことがある。お前は、俺の母親を知っているよな?」
「・・・はい」
唇をキュッと結び、ミニョが頷く。
「今日、母親に会ってきた。」
「・・・そうですか」
「病気を患っていて、もう、あまり長くないらしい。お前たちに、会いたがっていたが、ミナムは、会いたくないと言っていたが、お前は、どうしたい?」
「まだ、正直言えば、会うのが、怖いです。でも、会わなければ、いつか、会わなかった事を後悔する気がします。」
ミニョにとって、生まれて初めて、憎いと思ってしまった女性。しかし、自分が大好きなテギョンにとって、切っても切れない血の繋がりを持った女性だった。どんなに憎いと思っても、彼女のしたことが赦せなくても、テギョンにとって、大事な存在だったから、ミニョは、テギョンの為に、彼女を赦そうとしていた。
「そうか、わかった。病院の場所を教えておくから、会いに行けばいい。」
「ありがとうございます。あの・・・テギョンさんは、また、お母様に会いに行かれますよね?」
苦虫を潰したようなテギョンの表情に、ミニョが切ない顔をする。
今のテギョンは、記憶を失っていて、きっと、ファランを憎んだままだ。きっと、会いたがらないだろう。でも、心の片隅では、母親を恋しがっているに違いないと、ミニョは、思っていた。
「ファランssiを見捨てないください。すべてを失ったあとでは、手遅れなんです。ファランssiのそばにいてあげてください。それだけでも、きっと、ファランssiは喜んでくれますから・・・」
いつか、テギョンの記憶が戻ったとき、少しでも、ファランとのことで、後悔しないことを・・・ミニョは、祈っていた。
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