美男2
~Another Story~

「ラストシーン」
*39*


自分でもわからない感情に、テギョンは、戸惑い、頭は、錯乱していた。
そんなテギョンに、ゆっくりと考えている暇もなく、撮影は、ラストシーンへ向かっていた。

歓喜にざわめく参列者の向こうに、テギョンの姿を見つけるミニョ。
その瞬間、ミニョの耳から、騒がしい周りの音が消え、テギョンだけを見つめる。
テギョンは、ミニョの視線に気付くことなく、悲しそうに顔を歪ませ、俯きながら、教会を出ていってしまう。
テギョンの後ろ姿を見ていたミニョが、弾かれたように、参列者の波を掻き分け、テギョンを追いかける。

教会の外に出ると、テギョンの名前を呼び、ドレスの裾を持ち上げ、必死に、テギョンを追いかける。
テギョンが、ミニョの声に気付き、振り向くシーンで終わる。

ウェディングドレスの長い裾を持ち上げ、その上、履き慣れないヒールの靴で走るのは大変らしく、ミニョが、もたつきながら、走っている。
危なっかしい走り方で、ついには、足がもつれ、転びそうになる。

「きゃっ!」

転ぶと思った瞬間、ギュッと目を閉じたミニョ。
転んだミニョが、感じたのは、冷たい地面ではなく、温かなぬくもりだった。

恐る恐る、目を開くミニョ。

「・・・ったく、危なっかしいヤツだな。気をつけろよ!」

見えたのは、口を尖らし、憎まれ口を叩くテギョンの顔だった。
転びそうになったミニョを、テギョンが、抱き止めていた。

「あ、あ、ど、ど、どうしよう・・・すみません・・・」

驚いたミニョが、慌てて、テギョンから、離れようとするのを、監督が止めた。

「うーん、ミニョssi、テギョンssi!そのまま続けて!!振り向いて終わるより、こっちの方が、断然、盛り上がる!ラストを変更しよう!そのまま、抱き合って、カメラの位置を確認しよう。ふたり、少し、そのままで!」

急遽、ラストが変更になり、そのまま、撮影を続けるため、抱き合うふたり。
冷たい風に吹かれ、素肌を出した衣装のミニョは、寒そうに、カタカタと身体を震わす。

「寒いのか?」

「だ・・大丈夫・・・です・・」

そう強がっていても、昨日、高熱を出したミニョが、また、風邪を振り返し兼ねない。
テギョンが、ミニョの身体を包み込むように抱き込むと、テギョンの胸に、ミニョが収まる。ピッタリとくっつく身体に、ミニョが、驚いたように、身動ぐ。

「おとなしくしてろ」

テギョンが、ミニョを抱き締める。
さっきまで、あれほど苦しかった胸が、嘘のように、痛くない。
それどころか、心が安らぎ、落ち着くのを感じる。

記憶を失う前の俺にとって、コ・ミニョは、どんな存在だったのだろうか・・・?



★★★★