美男2
~Another Story~

「帰ってください」
*33*


「スゴい熱なんだ!早く、病院、連れて行かないと・・・」

ミナムが、ミニョを背負ったまま、玄関を出ようとする。

「ミナム、今から!?って、バラエティーの収録に間に合わなくなるよ!!」

ミナムとジェルミは、今から、レギュラー番組であるバラエティー番組の仕事があった。

「じゃあ、どうすればいいんだよ?」

ミナムは、焦っていた。背負っているミニョの体温は熱く、うなじにかかる息は、荒く、熱い。

「シヌヒョンは、ラジオの仕事で、さっき出たばかりだし・・・ミジャおばさんも、仕事に行っちゃったし・・・残るは・・・?」

ジェルミが、階段の上を見上げていると、丁度、自室で、仕事をしていたテギョンが、階段から降りてきて、ミナムたちに目もくれず、冷蔵庫から、水を取り出し、飲んでいる。

「ヒョン、お願い!!ミニョが、高熱を出して、倒れたんだ!!ミナムとオレは、これから仕事だし・・・頼れるのは、ヒョンしかいない!!」 

ジェルミが、手を合わせて、テギョンに頼み込んでいる。
テギョンが、ミナムを見ると、その背中に、ぐったりとしているミニョの姿があった。

「ヒョン・・・」

いつも強気なミナムが、珍しく、弱気な目で、テギョンを見ている。
はぁ~と、テギョンが、大袈裟なため息を吐き、額に手を当てた。

「・・・ジェルミ、毛布持ってこい。ミナム、そいつを俺の車に乗せろ」

「「了解!」」

ミナムは、テギョンの車の後部座席に、ミニョを乗せる。ジェルミが、ミニョの身体の上に、毛布をかける。
テギョンが、運転席に乗り込み、車を出す。

「はぁ・・・良かった。ヒョンに、拒否られたら、どうしようかと、思っちゃったよ・・・」

ふたりが、テギョンの車を見送っている。

「もし、そんな薄情な奴だったら、オレ、殴ってたな・・・あぁ、でも、殴ったら、記憶、戻ったかな?チェッ、残念・・・殴れなくて・・・」

ミナムが、拳をつくって、殴る仕草をする。

「ミナム・・・笑えない・・冗談キツいよ・・・まぁ、テギョンヒョン、あぁ、見えて、案外、優しいとこあるからね。それに、前にも、こんなこと、あったし・・・って、あっ!!ミナム、仕事!遅れちゃう!」

役目を終えたふたりが、慌てながら、仕事に向かう。

その頃、テギョンは、ただ、黙って、運転をしていた。

テギョンは、昨日の撮影を思い出す。
ふたりの別れのシーンで、ミニョは、演技と思えない、悲しそうな瞳と、苦しそうな嗚咽と泣き声に、テギョンは、胸が締め付けられ、苦しくなるのを感じていた。

「俺の前から、消えろ。顔を見たくない。」

そのセリフを言ったとき、ミニョの顔が、一層、苦しそうに歪んで見えた。

ちらりと、バックミラーを見ると、荒い息を吐き、昨日と同じ、苦しそうに歪むミニョの顔が見えたが、テギョンは、見ていられず、視線を外した。

救急病院に着き、ミニョを起こす為、テギョンは、後部座席のドアを開けた。

「おい!コ・ミニョ!起きろ」

「ヒョンニム・・・?どうして・・・ここに?」

熱で、意識が朦朧としているミニョ。
焦点が合わない目で、テギョンを見ている。

「ヒョンニム?・・・ここは、病院だ。お前は、高熱出して、ぶっ倒れたんだ・・・歩けるか?」

「病院・・?高熱・・?」

意識が朦朧としている中で、記憶を辿っているミニョ。

「コ・ミニョ、連れて行ってやるから、肩に掴まれ」

テギョンは、そんなミニョを抱き起こす。

「だ、大丈夫です・・・ひとりで、行きますから・・・」
ハッとしたように、ミニョが、支えていたテギョンの手を振り払うと、車から降りたが、フラフラしており、自分の身体も支えていられない様子だった。

「おい!無理するな!」 

アスファルトの地面に、素足で立っているミニョに、テギョンが、ミニョの手を掴む。

「マ室長、呼んでくださいますか?帰りは、マ室長に、送ってもらいますから、テギョンさんは、帰ってください。ご迷惑かけて、すみませんでした。ありがとうございました。」

荒い息を吐きながら、フラフラしながら、冷静に答えるミニョ。

「お前・・・正気か?」

「私と、一緒にいて、人に見つかったら、不審に思われます。これ以上、迷惑をかけたくありません。だから・・・帰ってください。」

辛いのか、目に涙を溜めているミニョに、テギョンの口が尖っていた。




★★★★