美男2
~Another Story~

「Rain」
*32*


シヌの彼女は・・・あの、ショートカットの女は、一体、誰なのか・・・記憶を取り戻そうと考えると、頭が、締め付けられるように、痛くなる。
結局、これ以上、何も思い出すことが出来ず、テギョンは、考えることをやめてしまう。

撮影は、夜通しで続けられる。
夜になり、雨を降らしながら、ふたりの別れのシーンが行われる。
ミニョとシヌと抱き合っている姿を見てしまったテギョン。
テギョンは、ミニョとシヌとの仲を誤解し、これ以上は、一緒にいれないと、ミニョの前から、立ち去ろうとする。
ミニョは、誤解だと、話を聞いてほしいと、テギョンの腕を掴む。

「待って・・・行かないで・・・お願い・・・」

テギョンの腕にすがりつき、泣いているミニョ。

「俺の前から、消えろ。顔を見たくない」

聞く耳を持とうとしないテギョンが、その手を振り払う。
ミニョを、冷たく睨むように見て、テギョンが、ミニョをひとり取り残し、去ってしまう。
冷たい雨が、容赦なく、ミニョの身体を打ち付ける。
力なく地面にしゃがみ込み、声をあげて泣くミニョ。
冷たい言葉とともに去っていったテギョンの目にも、涙が滲んでいる。

テギョンの撮影が先に終わっても、ミニョは、撮影真っ只中、冷たい雨の中、子どものように、声をあげながら泣いている。

”俺の前から、消えろ・・・お前の顔を見たくない“ 

以前にも、同じようなことを、テギョンに言われたことがあった。
セリフだと、演技だとわかっていても、ミニョにとっては、辛い言葉だった。
カメラの角度を変えながら、撮影が行われ、ミニョは、長い間、雨に打たれていた。

カットの声が掛かっても、感情が高ぶってしまい、ミニョが、濡れたまま、泣き続けている。
スタッフが、寒さでガタガタ震えるミニョにタオルを被せ、ミニョの身体を擦り、温める。
野外の撮影のため、シャワーもなく、そのまま、ミニョを、車に乗せ、濡れている衣装から、乾いた服に着替えさせ、合宿所に帰らせる。

ミニョは、ずっと泣いていたせいか、頭がボーとしたまま、冷たくなった身体を温めるため、シャワーを浴びたあと、そのまま、寝た。

翌朝、朝食の時間になっても起きてこないミニョを、心配したミジャおばさんが、ミナムに、様子を見てくるように言う。

慌てたようにミナムが、ミニョを背負って現れる。

「ヤバイ!大変だ!ミニョが、熱、出した!」

ミニョは、ミナムの背中で、ブルブル震えながら、荒い息を吐いていた。




★★★★