美男2
~Another Story~

「memory」
*16*


その歌は、お父さんが、愛するお母さんのために作った歌。
そして・・・
ヒョンニムが、あのコンサートで歌った歌。

一歩 あなたを見送るたびに
涙が出る
一歩 あなたが離れるたびに
また 涙が溢れる
手を伸ばしても 手を差し出しても
届かない場所へ
あなたが行ってしまうのに 引き留められず
泣いてばかりの私

どうしよう どうしよう
あなたが行ってしまう
どうしよう どうしよう
私を置いて行ってしまう
愛してる 愛してる
あなたには届かない
心の中の叫びだから


なんでもいい、
ちょっとだけでもいい
ヒョンニムに、思い出してほしくて・・・

でも・・・・
レコーディングブースのガラスの向こう、ヒョンニムは、顔色ひとつ、変えずに、聴いている。

あぁ・・・・やっぱり・・・
すべて、忘れてしまったんですね・・・

その顔を見つめるだけで、辛くなってくる。
わかっていたけど、現実を突きつけられた気がして・・・
片思いだった頃より、胸が、うんと苦しくて、痛くて・・・・・

「コ・ミニョ!パーフェクト!!ワンダフル!!グレート!!」

歌い終わったあと、アン社長が、手を叩きながら、ガッツポーズをしているのが見える。
ジェルミ、シヌヒョンが拍手をしてくれている。
ヒョンニムは、無言のまま、レコーディングルームを出て行ってしまう。
追いかけることも出来ず、その後ろ姿を見つめることしか、出来なかった。

「ミニョ、よくやったぞ!」

お兄ちゃんは、私の肩を組むと、トントンと叩いた。

「明日は、テギョンの快気祝いと、ミニョさんの御披露目パーティーだ!午前中に、ミニョさんは、宣材用の写真撮影を撮ってもらって、マネージャーは、マ室長にやってもらうか、よろしく頼んだぞ、マ室長!」

「よろしくお願いします、マ室長」

マ室長に、頭を下げる。

「シスター、大丈夫です!任せてください!」

胸を張るマ室長。

「マ室長、私、もう、シスターではないですから・・・」

「あぁ、ついクセで・・・また、頑張りましょう!全力で、サポートさせていただきます!」


そのあと、合宿所に帰ったけど、ヒョンニムの姿は、なかった。
また、合宿所に暮らすことになり、場所は、プレゼント部屋を借りることになった。
シヌヒョンとジェルミが、部屋にあったプレゼントを片付けるのを手伝ってくれた。

「狭くて、ごめんね・・・空いてる部屋が、ここしかなくて・・・」

「大丈夫です。すみません、また、お世話になります」

「また、ミニョと一緒に暮らせるなんて、嬉しいよ!あとで、パーティーしようね」

「ありがとうございます、ジェルミ」

片付けを終えると、リビングで、パーティーをした。
久々に、お酒を飲んだら、すぐに酔ってしまい、そのまま、リビングで寝てしまった。
足音が聞こえ、私は、目を覚ました。
キッチンに、人影が見える。
手元には、青い水の入った瓶。

ヒョンニム・・・

たまに、頭が痛いのか、こめかみを指で擦りながら、顔をしかめている。

まじまじと見つめていたら、ふと、目が合った気がして、慌てて、目を逸らし、毛布の中に潜った。

たぶん、夜盲症のヒョンニムには、こっちは、見えないはず・・・。

ヒョンニムは、こっちを気にすることなく、階段を上がっていく。

私は、息を潜めながら、足音を聞いていた。

また、ひとつ屋根の下、一緒に暮らせるのに、ヒョンニムとの距離が遠くに感じた。



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