美男2
~Another Story~

「会いたい」
*11*


お兄ちゃんが、運転する車の中で、私は、寝てしまっていた。
合宿所に着き、お兄ちゃんに、揺り起こされる。
久々の合宿所。
ジェルミが、私の荷物を持ちながら、中へ入っていく。
戻って来れた嬉さと、記憶を失ったヒョンニムに会う。一体、どんな顔で会えばいいのか、戸惑い、心が揺れる。
躊躇ってしまい、足が動かず、中に入ることが、出来ない。

「ヒョンなら、いないよ」 

デッキにいるジョリーと遊んでいるお兄ちゃんが、私の顔を見ずに言う。

さすが、お兄ちゃん・・・
何でも、お見通し・・・

意を決して、玄関のドアを開けると、

「おかえり、ミニョ」

以前と変わらない、優しい笑顔があった。

「シヌヒョン、ただいま・・・」

頭をクシャクシャに撫でる優しい手に、不意に泣きそうになる。

「疲れただろ?少し、休むといいよ」

頭を撫でていた手が、背中を押し、中に促される。
夕食の時間になったら起こすから、それまで、お兄ちゃんの部屋で、寝るように言われ、お兄ちゃんの部屋に行く。

その途中に、ヒョンニムの部屋が見える。
ヒョンニムの部屋の前、いないと、わかっていても、小さくノックをして、躊躇いがちに、ドアを開ける。
中を見回し、そっと、足を踏み入れた。
1年前、この部屋を出て行ったときと、何一つ、変わっていなかった。
変わっていたのは、この部屋の主が、いないと、いうこと・・・。
部屋のあちこちに飾られたヒョンニムの写真に、目を奪われ、足を止めた。

「・・・・ヒョンニム」

この部屋にいると、思い出す。
ヒョンニムと過ごした日々や、旅立つ前のあの夜のこと・・・

今、あなたは、何処にいるんだろう・・・
例え、記憶を失って、自分のことを忘れてしまっていても、やっぱり・・・・

「・・・会いたいです・・・ヒョンニム・・・会いたいよ・・・ヒョンニム・・・・」

その場に、崩れ落ちるように、私は、泣いていた。




★★★★