美男2
「ひとり旅」
*108*
お兄ちゃんに、電話で報告をした。
数日後、仕事を終えたお兄ちゃんが、私の家に来た。
お兄ちゃんは、口をキュッと結んだまま、箱の中に入ったもの、ひとつひとつに、目を通していた。
「はぁぁ……そういうことだったのか……」
すべてを見終わると、お兄ちゃんは、天を仰ぐように、上を見上げ、大きく息を吐いた。
「ミニョ、今度、一緒に、母さんに会いにいくか?」
「……うん」
お母さんのお墓は、お母さんが生まれ育った場所、釜山市内にあることがわかった。
お兄ちゃんは、相変わらず、忙しいようで、テレビで観ない日はないくらい、活躍をしていた。
ある日、「なんとか、休みが、1日だけ取れた」と、連絡をもらい、準備をしていたけど、行く前日に、電話が入った。
「悪い、ミニョ、明日、休みが取れそうにないんだよ…マ室長が、また、仕事を持ち込んできて…」
「うん、大丈夫。無理しないで…。私、ひとりでも、行けるから。」
「そうか、本当、ごめんな」
仕方なく、私、ひとりで、釜山に向かうことになった。
翌日、空港に向かい、国内線のチェックインをカウンターで済ませ、ベンチに座った。
飛行機に乗るから、携帯を切ろうと、携帯の画面を見ると、何件か着信が入っていることに気付く。
気になって、電話をしようとしたとき、また、携帯が鳴り出した。
「もしもし、オッパ…?」
「お前、今、何処だ?」
「空港です、今から、釜山に、行ってきます」
「だから、空港のどの辺にいる?」
「えっ…?」
…なんで、テギョンさんが、空港にいるの?
キョロキョロと辺りを見回すと、『ねぇ、聞いた?今、この空港に、ファン・テギョンがいるんだって!!行ってみようよ!!』そんな女性の声が聞こえ、入口の方へと女性たちが走っていく姿が見える。
「おい、聞こえてるのか?」
「えっ、あっ、はい。あ、あの、どうして…?」
「……ミナムに聞いた。母親の墓参りに行くんだろ?」
「……はい」
「ミニョひとりじゃ不安だから、一緒に行ってやれと、いきなり、チケット渡されたからな。仕方ない、一緒に行ってやる。」
「あ、あの…、お仕事、お仕事の方は、大丈夫なんですか?」
「心配するな、2日は、休みを取ってある。もう、お前、手続きは済ませたのか?」
「…はい」
電話が切れ、ベンチに座っていると、サングラスをかけた男の人が、国内線のカウンターにいた。
その男の人が纏うオーラで、一瞬で、誰だか、わかってしまい、私は、恥ずかしくなり、そのヒトから、視線を逸らし、俯いていると、コツコツという足音とともに、黒い革靴が見えた。
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