「美男2」

「約束」

*86*


グスグスと鼻を啜りながら、泣いているミニョに、テギョンは、困ったように、笑っている。

「なんだよ、泣くほど、嬉しいのか?」

コクコク頷く、ミニョ。

「残念ながら、これは、プロポーズじゃないぞ。似たようなもんだが、まだ、何も、用意してないから、正式なのは、もう少し後だが、これは、約束だ。だから、お前も約束しろ。オレの元から、いなくならない、と。そばに、いると。」

ミニョは、鼻を啜りながら、顔を上げ、涙を掌で拭う。

「……はい、約束します」

テギョンは、ニコッと、嬉しそうに笑うと、ミニョの頬に手を添え、唇に、口づけた。
啄むように、何度も、角度を変えながら、重なる唇。
離したくないとばかり、ミニョの身体を隙間なく、力強く抱き寄せる。
キュッと、テギョンのシャツを掴むミニョ。
テギョンが、唇を離すと、ミニョは、瞳を潤ませ、熱に浮かされたような赤い顔で、テギョンをボーッと見つめている。
テギョンは、ニヤリと、口角をあげながら、ミニョの襟元をずらし、先ほど、ミニョの白い首筋に付けた紅い痕を指先で滑らした。
ピクンと反応するミニョを楽しむように、星のネックレスを指で払うと、星があった場所に、強く口づけた。

「ん……何…?」

不思議そうに、首を傾げるミニョ。チクッとする痛みを感じるが、なんの痛みなのか、わからない。

「約束の印だ。そう簡単には、消えないはずだが、消えたら、また、付けてやるからな。」

ふたつの紅い痕を見つめながら、テギョンは、満足そうに、笑った。

「おーい!!ヒョーン、起きてる?ヒョーン!!起きて!!」

ドア越しに、ジェルミの声と、うるさいくらいに、ドンドン、ドアを叩く。

せっかく、甘い雰囲気を楽しんでいたのに、ジェルミに邪魔され、テギョンが、不満そうに、口を尖らした。
テギョンは、ベッドから起き上がり、ドアに向かう。

「なんだ?朝から、うるさいぞ、ジェルミ!!」

「お、起きてたんだね、大変なんだよぉ!!朝、テレビつけたら、ミナムが、ユ・ヘイssiと、一緒に、会見してるんだよ!!」

「で、なんの会見だ?」

大して、興味がないが、一応、話を聞くテギョン。

「正式に、お付き合いさせていただくことになりました…って」

「それが、なんだ?」

テギョンは、腕を組み、口を左右に動かすと、また、部屋に戻ろうとする。

「ま、待って、続きがあって、今日の、トップニュースが、ヒョンのことだったんだよ。昨日、ミニョと一緒に歩いたんでしょ?『ファン・テギョン、恋人と公の場に登場!!ついに!!結婚、秒読みか!?』『ファン・テギョン、恋人に、甘い微笑み!!』ねぇ、スゴイでしょ?
あと、ヒョン、携帯の電源切ってた?マ室長から、電話があって…今日、事務所に来るなって。今、事務所が、蜂の巣騒ぎになってるみたいで、どこの入口も塞がれて、入れないみたい……行っても、揉みくちゃにされるから、あとで、連絡しろって…
それと、ミニョ、見なかった?今日、まだ、一度も見てないんだよね…朝ごはん、楽しみにしてんだけど…」

ジェルミは、ミニョが、テギョンの部屋にいることを知らないまま、また、リビングに戻っていく。

テギョンは、昨日、パーティーで、携帯の電源を切ったままだったことに気付くと、部屋に戻り、ジャケットのポケットに仕舞ったままだった携帯を手に取ると、電源を入れた。
すぐに、着信があったことを知らせる音が鳴り響き、いくつもの留守電が残っていた。
留守電をチェックするテギョン。

「おい、コ・ミニョ、ジェルミが腹空かせてたぞ」

まだ、ボーッと、ベッドに寝ているミニョに声を掛けると、ハッと我に返ったように、慌てて、跳ね起き、そして、ベッドから落ち、尻餅をつく。

「いっ…痛い」

「ククク……」

テギョンは、その様子を、横目で、可笑しそうに、拳に手を当てて見ていた。



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