「美男2」
「素直になれ」
*58*
「ちょっと寒いけど、二階のテラスで飲もうか…」
シヌは、二人分のカップをトレイに載せると、階段をあがっていく。
テラスは、朝日のオレンジ色に、眩しく染められている。外に出ると、ヒヤッとした、冷たい朝の空気が、眠気を醒ます。
テーブルに、トレイを置き、椅子に腰かける。
シヌが、ミニョに膝掛けを渡し、カップを差し出した。
「熱いから、気をつけてね」
シヌから、ミニョは、カップを受けとり、両手で、カップを包み込むと、お茶から、フワッと、金木犀の甘い香りがする。
「桂花烏龍茶だよ」
「金木犀の匂いがしますね、この匂い、大好きです。」
ミニョが、穏やかな笑みを見せる。
シヌも、柔らかな笑みを見せ、カップに口をつけた。
金木犀の匂いと、温かいお茶のおかげで、ミニョの気持ちも、随分と、落ち着きを取り戻していた。
「ミニョ…」
シヌの物静かな声に、ミニョが、カップから顔をあげた。
「はい」
「自分の気持ちや思いは、素直に、相手に伝えた方がいい。自分の気持ちや思いは、自分にしか、わからないだろ?でも、時に、相手に、見せる必要がある。ずっと、相手に言えないことを胸の内に隠して、黙っていることは、辛いし、苦しいだろ?自分の気持ちを相手に、伝えたことで、相手を傷つけるかもしれないと思うかもしれない…でも、それは、間違いなんだ。」
シヌは、真っ直ぐと前を向いたまま、話をしながら、ミニョがミナムだった頃を思い出していた。
ミニョに恋していた自分。ミニョを、ただ黙って、見守り続けていた。本当の想いを隠し、でも、遠回しにしながら、ミニョに伝えたが、その想いは、ミニョに伝わることはなく、その想いを打ち明ける頃には、もう、遅かった。
後悔した。もっと、早く、伝えていれば、と…。
でも、今は、もう、吹っ切っているつもりだし、恋に不器用なふたりを、応援してやりたいと、思っている。それに、ミニョが、傷ついて、泣いている姿を見たくなかったから…。
テギョンの記事に、ひとりで、傷ついて、気持ちを抱え込んでしまっているミニョを、お茶に誘って、話をしたかった。
「テギョンは、ヒトの気持ちに対して、人一倍、鈍感だからな…ちゃんと、言わなきゃ、アイツには伝わらない。だから、勇気を出して、思いを胸に閉じ込めないで、素直になるんだ、わかったな?」
ミニョは、返事をするのを困っているのか、口をすぼませる。
「返事!!」
「…はい」
「よし」
シヌが、ミニョの寝癖のついた頭を、励ますように、クシャクシャに撫でた。
★☆★☆
「素直になれ」
*58*
「ちょっと寒いけど、二階のテラスで飲もうか…」
シヌは、二人分のカップをトレイに載せると、階段をあがっていく。
テラスは、朝日のオレンジ色に、眩しく染められている。外に出ると、ヒヤッとした、冷たい朝の空気が、眠気を醒ます。
テーブルに、トレイを置き、椅子に腰かける。
シヌが、ミニョに膝掛けを渡し、カップを差し出した。
「熱いから、気をつけてね」
シヌから、ミニョは、カップを受けとり、両手で、カップを包み込むと、お茶から、フワッと、金木犀の甘い香りがする。
「桂花烏龍茶だよ」
「金木犀の匂いがしますね、この匂い、大好きです。」
ミニョが、穏やかな笑みを見せる。
シヌも、柔らかな笑みを見せ、カップに口をつけた。
金木犀の匂いと、温かいお茶のおかげで、ミニョの気持ちも、随分と、落ち着きを取り戻していた。
「ミニョ…」
シヌの物静かな声に、ミニョが、カップから顔をあげた。
「はい」
「自分の気持ちや思いは、素直に、相手に伝えた方がいい。自分の気持ちや思いは、自分にしか、わからないだろ?でも、時に、相手に、見せる必要がある。ずっと、相手に言えないことを胸の内に隠して、黙っていることは、辛いし、苦しいだろ?自分の気持ちを相手に、伝えたことで、相手を傷つけるかもしれないと思うかもしれない…でも、それは、間違いなんだ。」
シヌは、真っ直ぐと前を向いたまま、話をしながら、ミニョがミナムだった頃を思い出していた。
ミニョに恋していた自分。ミニョを、ただ黙って、見守り続けていた。本当の想いを隠し、でも、遠回しにしながら、ミニョに伝えたが、その想いは、ミニョに伝わることはなく、その想いを打ち明ける頃には、もう、遅かった。
後悔した。もっと、早く、伝えていれば、と…。
でも、今は、もう、吹っ切っているつもりだし、恋に不器用なふたりを、応援してやりたいと、思っている。それに、ミニョが、傷ついて、泣いている姿を見たくなかったから…。
テギョンの記事に、ひとりで、傷ついて、気持ちを抱え込んでしまっているミニョを、お茶に誘って、話をしたかった。
「テギョンは、ヒトの気持ちに対して、人一倍、鈍感だからな…ちゃんと、言わなきゃ、アイツには伝わらない。だから、勇気を出して、思いを胸に閉じ込めないで、素直になるんだ、わかったな?」
ミニョは、返事をするのを困っているのか、口をすぼませる。
「返事!!」
「…はい」
「よし」
シヌが、ミニョの寝癖のついた頭を、励ますように、クシャクシャに撫でた。
★☆★☆