「美男2」

「パパラッチ」

*48*


ガインに、突然、唇を奪われ、驚いたように、目を見開いたままのテギョン。
次の瞬間、身体中が、ザワザワとした寒気を感じ、ガインの身体を突き放した。その勢いで、バランスを崩し、地面に尻餅をついてしまうガイン。

「きゃっ!!」

「何、考えてるんだ!!オレに触るなって言ってるだろ!!」

テギョンは、そんな、ガインにお構い無しに、キッとキツく睨みながら、唇を指で擦った。

「でも…私、諦めきれないよ……なんで、あのコなの…?テギョンオッパに…会いたくて……厳しいレッスンも…頑張って…やっと…ここまで……テギョンオッパを……誰よりも…愛してるのに……」

地面に座り込んだまま、ガインは、ポロポロと涙を溢しながら、泣いている。

「アイツは、オレが無くしていた大事なモノを、他の女たちが持っていないモノを、アイツだけは、持っていた。それは、アイツが、オレに教えてくれた、大事なモノだ。オレも、アイツ以外に、やるつもりはない。だから、さっさと諦めろ。お前の気持ちなんて、オレにとって、煩わしいだけだ。」

事務所のバンが、テギョンの前に停まる。
テギョンは、一度も、ガインに振り向きもせずに、バンに乗り込んだ。
バンは、すぐに、動き出す。

「ねぇ、そこに、誰か、いますよね?出てきてくださいよ」

ガインは、ガサガサ動く植木の茂みに目を凝らす。
植木の茂みから、頭頂部が禿げかかった記者と、もうひとり。
ふたりは、驚いたように顔を合わせる

「ナラ日報のキム記者!」

「ハン日報のチョン記者!」

黒ぶちメガネをかけ、茶髪頭の若い青年。
まだ若手の記者ながらも、記者に必要な直感と素早さで、次々と、スクープを撮り上げる、マスコミ業界では、切れ者の記者だった。

ガイン「キム記者とチョン記者ですよね。先ほどの、テギョンオッパとのキスは撮っていたんですよね?」

キム「あぁ、もちろんです!!」

チョン「まさか、この期に及んで、消してくれとは言わないですよね?こちらも仕事なんですから。」

ガイン「私も利用したいんです、あなた達を…」

キム「どういうことですか?」

チョン「チェガインssiは、ファン・テギョンのことが、好きなんですよね。でも、ファン・テギョンには、確か、結婚を決めた相手がいるはずですよね」

ガイン「そうですね。でも、私の父親とテギョンオッパのお父様は、私たちを、結婚させようと考えていたみたいですけど…」

キム「許嫁ということですか?」

ガイン「正式ではないですが…でも、面白いと思いません?あの、ファン・テギョンの新たなスキャンダルとして…損はさせませんよ」

ガインの、何かを企むように、妖しく、真っ赤な唇に弧を描いた。



★★★★