「美男2」
「仕事だから…」
*46*
キスシーンの経験なんて、これまでに、何度もあった。
自分が、潔癖症で、ヒトに触れられることがイヤだとしていても、それは、仕事だから仕方ないことだ、と割り切っていた。
今回も、淡々と、指示通りに動いて、撮影をしていた。演技に集中してしまえば、気にもなくなる…そう、考えていた。
近付く度に、チェ・ガインのニオイに敏感になってしまい、鼻を突く。
真っ赤に色づく唇に、唇を近付けるだけで、嫌悪感がしてくる。
触れ合った唇の感触が、いつもの感触と違うと思っただけで、吐き気がしてきて、最悪な気分だった。
"早く、終わってほしい"
「カット」の声がかかれば、すぐにでも、離れられるのに、一向に、声がかからず、演技を、続行するしかなかった。
チェ・ガインが、首にしがみつくように、抱きついてきて、身体を押し付けてくる。そして、唇を、無理矢理、強く押しつけられ、虫が蠢くように、唇が動く。
「カット!!最高に、良かったですよ!!ふたりとも!!」
周りからは、感嘆の声が上がり、監督も、満足そうに笑っている。
「ありがとうございます」
チェ・ガインは、真っ赤に色づいたままの唇で、満足そうに微笑んでいる。
ただひとり、テギョンだけ、笑いもしなかった。
「休憩に入ります。そのあと、スチール撮影に入りますので、よろしくお願いします」
「失礼します」と、テギョンが、スタジオを、足早に出ていってしまう。
テギョンは、トイレに駆け込むと、洗面台の前に立つと、勢いよく水を出し、唇を拭っていた。
テギョンが、トイレから戻り、スタジオの端にあった椅子に座り、机に置いてあったペットボトルの水を喉に流し込む。
「テギョンオッパ!!」
次の撮影のため、衣裳チェンジしてきたガインが、ニコニコしながら、テギョンの隣に座る。
「気安く話しかけるな、近寄るな」
不機嫌さを隠そうとしないテギョン。
「今日の撮影、本当に楽しみにしていたの。キスシーンの相手が、テギョンオッパだって、わかったときから、もう、嬉しすぎて、夜も眠れなくなるくらいに……テギョンオッパと、撮影でも、キスが出来て、最高に、嬉しかったのよ。」
「オレは、最悪な気分だ」
「そうよね…テギョンオッパには、彼女がいるんだもんね……。ねぇ、テギョンオッパは、どうして、あのコなの?ユ・ヘイオンニとの方が、お似合いだったのに…」
テギョンは、聞く耳も持たないで、無視をしている。
"はぁ……?
嘘つき妖精との方がお似合いなんて、おぞましくて、鳥肌が立つ"
「そうそう、私ね、ユ・ヘイオンニとは、前、ドラマでご一緒にさせてもらってから、知り合いなの。すごく優しくしてくれて、憧れてるの。スタイルもいいし、性格だって、いいでしょ?なんの欠点もないのに…」
"嘘つき妖精のこと、何も、知らないんだな…"
フンと、可笑しそうに、鼻で笑うテギョン。
「これだけ言っておく。誰がなんと言おうと、オレには、アイツだけだ。アイツ以外に、興味ない。」
テギョンは、それだけ言うと、椅子から立ち上がり、また、スタジオから出ていってしまう。
面白くないとでも言うように、頬を膨らますガイン。
"なんで?どうして、あのコなの?なんの取り柄もないのに、どこが、いいわけよ!!信じられない!!でも、まだ、諦めない!!絶対に!!こんな、絶好なチャンス、逃がすわけない!!"
☆☆★★
「仕事だから…」
*46*
キスシーンの経験なんて、これまでに、何度もあった。
自分が、潔癖症で、ヒトに触れられることがイヤだとしていても、それは、仕事だから仕方ないことだ、と割り切っていた。
今回も、淡々と、指示通りに動いて、撮影をしていた。演技に集中してしまえば、気にもなくなる…そう、考えていた。
近付く度に、チェ・ガインのニオイに敏感になってしまい、鼻を突く。
真っ赤に色づく唇に、唇を近付けるだけで、嫌悪感がしてくる。
触れ合った唇の感触が、いつもの感触と違うと思っただけで、吐き気がしてきて、最悪な気分だった。
"早く、終わってほしい"
「カット」の声がかかれば、すぐにでも、離れられるのに、一向に、声がかからず、演技を、続行するしかなかった。
チェ・ガインが、首にしがみつくように、抱きついてきて、身体を押し付けてくる。そして、唇を、無理矢理、強く押しつけられ、虫が蠢くように、唇が動く。
「カット!!最高に、良かったですよ!!ふたりとも!!」
周りからは、感嘆の声が上がり、監督も、満足そうに笑っている。
「ありがとうございます」
チェ・ガインは、真っ赤に色づいたままの唇で、満足そうに微笑んでいる。
ただひとり、テギョンだけ、笑いもしなかった。
「休憩に入ります。そのあと、スチール撮影に入りますので、よろしくお願いします」
「失礼します」と、テギョンが、スタジオを、足早に出ていってしまう。
テギョンは、トイレに駆け込むと、洗面台の前に立つと、勢いよく水を出し、唇を拭っていた。
テギョンが、トイレから戻り、スタジオの端にあった椅子に座り、机に置いてあったペットボトルの水を喉に流し込む。
「テギョンオッパ!!」
次の撮影のため、衣裳チェンジしてきたガインが、ニコニコしながら、テギョンの隣に座る。
「気安く話しかけるな、近寄るな」
不機嫌さを隠そうとしないテギョン。
「今日の撮影、本当に楽しみにしていたの。キスシーンの相手が、テギョンオッパだって、わかったときから、もう、嬉しすぎて、夜も眠れなくなるくらいに……テギョンオッパと、撮影でも、キスが出来て、最高に、嬉しかったのよ。」
「オレは、最悪な気分だ」
「そうよね…テギョンオッパには、彼女がいるんだもんね……。ねぇ、テギョンオッパは、どうして、あのコなの?ユ・ヘイオンニとの方が、お似合いだったのに…」
テギョンは、聞く耳も持たないで、無視をしている。
"はぁ……?
嘘つき妖精との方がお似合いなんて、おぞましくて、鳥肌が立つ"
「そうそう、私ね、ユ・ヘイオンニとは、前、ドラマでご一緒にさせてもらってから、知り合いなの。すごく優しくしてくれて、憧れてるの。スタイルもいいし、性格だって、いいでしょ?なんの欠点もないのに…」
"嘘つき妖精のこと、何も、知らないんだな…"
フンと、可笑しそうに、鼻で笑うテギョン。
「これだけ言っておく。誰がなんと言おうと、オレには、アイツだけだ。アイツ以外に、興味ない。」
テギョンは、それだけ言うと、椅子から立ち上がり、また、スタジオから出ていってしまう。
面白くないとでも言うように、頬を膨らますガイン。
"なんで?どうして、あのコなの?なんの取り柄もないのに、どこが、いいわけよ!!信じられない!!でも、まだ、諦めない!!絶対に!!こんな、絶好なチャンス、逃がすわけない!!"
☆☆★★