「美男2」

「心配いらない」

*43*


CM撮影の当日の朝。

「いってらっしゃい」

テギョンを見送るために、玄関の前、ニッコリと微笑みながら立っているミニョ。

「行ってくる」

テギョンが、怪訝そうな顔で、ミニョを見ている。

……昨日から、ミニョの様子がおかしい。
何をしていても、上の空と言うか……

昨日は、あれから、事務所をすぐに出て、車に乗り込んだ。

「何が、食いたい?」

問いかけても、ミニョの返事が返ってこない。ふと、横を見ると、ミニョは、ボーッと窓の外を見ていた。

「おい、コ・ミニョ!!」

「あっ、はい!!」

テギョンの怒ったような声に、ミニョが、慌てて、返事をする。


メシを食べに連れて行っても、昨日は、目の前に、料理が運ばれていても、頬杖をついて、フォークを持ったまま、食べようとしない。

「おい、食べないのか?冷めるぞ」

「……うん?あっ!?はい!!すみません」

ハッとしたように驚くと、目をぱちくりさせ、食べ始めたミニョ。


昨日の、チェ・ガインと共演すると言ったときから、コイツの様子がおかしい……。

テギョンは、唇を尖らしながら、ニッコリ微笑むミニョを見ていた。

「テギョンさん、時間、大丈夫ですか?」

玄関から、一歩も外に出ようとしないテギョンが心配になり、ミニョが、慌てて、声を掛ける。

「テギョンさん?」

目をぱちくりさせて、首を傾げるミニョ。

不意打ちだった。

"チュッ"

一瞬だけ、テギョンの唇が、ミニョの唇に触れ、何事もなかったように、唇を離すテギョン。

「行ってくる」

目を見開いたままのミニョに、テギョンは、手を小さく振ると、仕事先に向かった。

"いらない心配はするな。オレには、お前だけだ"



★☆☆☆