X'mas



*4*


繁華街は、イルミネーションを楽しむ人々で溢れ、車は、いつも以上に多く、長い列をつくり、テギョンの車も、渋滞にはまってしまう。

ハァァ……

腕時計を見ると、会場から、随分と時間が掛かっていることに気付く。なかなか、動き出さない車に、焦りと苛立ちが隠せず、チッと舌打ちをするテギョン。

ふと、フロントガラスに目をやると、チラチラと雪が舞っていた。


クリスマス当日。
ミニョは、ボランティアのクリスマスイベントを終え、一度、家に帰り、着替えると、教会に向かった。
ミニョにとって、子どもの頃から、クリスマスは、教会で祝うことが、恒例行事になっていた。
いつもより、厳粛な雰囲気の礼拝堂で、ミサが行われ、子どもたちの生誕劇を見て、賛美歌を歌う。
クリスマスの礼拝が終わると、ミニョは、合宿所に向かった。

「終わった。今から、向かう。中で、待ってろよ」

「お仕事、お疲れさまです。気を付けてくださいね」

ミニョは、ニッコリと微笑むと、テギョンの帰りを待ちきれず、中に入らず、外で、待っていることにした。

「今日は、曇っていて、星が見えないのね。」

肌を突き刺す、冷たい風。今日は、一段と冷え込んでいた。

「寒ーーい!!」

ミニョが、巻いていたスヌードに、顔を埋める。
白いモノが、チラチラと舞っていることに気付き、空を見上げる。

「あっ、雪だぁ」

ミニョは、寒さで、頬を赤くしながら、雪を見つめていた。

合宿所に、一台の青い車が停まる。

「あれほど、中で、待ってろって言ったのに……」

テギョンの目に、ウッドデッキのベンチに座っている人影が、ぼんやりと見えていた。
テギョンは、車から出ると、冷たい風が、肌に突き刺さるように痛く、ジャケットのポケットに手を突っ込み、巻いていたマフラーに顔を埋めるようにして、その人影に近付くと、歌声が聴こえてくる。

"きよし この夜
星は 光り
救いの御子は
馬船の中に
眠り給う 夢 安く"

透き通るような美しい歌声が、ウッドデッキに響いた足音で、ピタリと止まる。

「中で、待ってろって言ったじゃないか……」

「なんだか、待ちきれなくて……すみません」

ミニョは、イタズラが見つかってしまった子どもみたいに、バツが悪そうに肩を竦ませた。
寒そうに、スヌードで半分以上、顔を隠しているミニョ。それでも、頬や鼻の頭が、赤く染まっていた。

「鼻が赤いぞ。まるで、真っ赤な鼻のトナカイみたいだぞ」

クックッ…と笑いながら、ミニョの鼻をキュッと摘まむテギョン。
からかわれたことに、口をすぼめ、テギョンを見上げるミニョ。

「……ったく、冷たくなってるじゃないか」

テギョンが、冷えきっているミニョの手を両手で包み込むと、ハァーと、温かな息を、ミニョの手に吹きかけると、ミニョは、恥ずかしそうに、目を伏せてしまう。
テギョンが、そんなミニョに、ニヤリと笑うと、冷えきってしまっているミニョの身体を抱き締めた。
きっと、長い間、自分を待っていたに違いない。
そう思うと、テギョンは、愛しさでいっぱいになり、自分の温かさを分けるように、ギュッと強く抱き締めた。



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