「美男2」

「行きたい場所」

*35*


ドラマ撮影のシヌに続き、バラエティー番組にレギュラーを持っているジェルミとミナムも、本日も仕事が入っていた。

「ヤダぁ……仕事、行きたくないぃぃ……」

玄関では、まるで、「幼稚園に行きたくない」と、母親の手を掴み、駄々をこねる子どもみたいに、見送るミニョの手をギュッと握りしめ、離そうとしないジェルミがいた。

「……ったく、いい加減にしろ!!!もう、時間がなくて、急いでるんだよ!!」

その、ジェルミの手を、ミナムが、容赦なく、手刀で振り落とすと、ジェルミの着ていたパーカーをグイッと掴んだ。

「うっ……く、苦しい……ミ、ミナム…こ、コケる…あっ、ミニョ……いってきま……す」

ジェルミは、ミナムに引きずられ、コケそうになりながらも、後ずさりのまま、ミニョに、大きく手を振って、出掛けて行った。

騒がしいのが消え、合宿所に残ったのは、ミニョとテギョンのふたりきりだけ…。

「テギョンさん、今日、お仕事は?」

ミニョが、まだ、合宿所に残っていたテギョンに聞く。

「オレは、アルバムの楽曲制作だ」

例のCM撮影を明日に控え、本日は、事実上"オフ"になっていたが、ミニョに、ヒマだと思われたくないため、仕事があるフリをしていた。
それに、楽曲制作だと言っていれば、合宿所でも、出来るし、ミニョと一緒にいれると、テギョンは、密かに、ほくそ笑んでいた。

「事務所に行かれるのですか?」

「いや、ココでやるつもりだが…」

「……そうですか。あ、あの、私、出掛けますけど、いいですか?」

「ど、何処に?」

思ってもないミニョの言葉に驚き、聞き返してしまうテギョン。

「院長様に、会いに行ってきます」

"ハァー、そういうことなら、一緒に行ってやるか…。それに……コイツの母親代わりでもあるの院長様にも、しっかりと挨拶をしておかないとな……"

「送ってやろうか?」

「いいんですか?」

嬉しそうなミニョの声に、テギョンの口角もあがる。

「別に、構わない」

「すぐに、洗いモノ済ませるので、待ってくださいますか?」

「あぁ、わかった」

ミニョは、キッチンシンクに向かい、食事の後片付けと洗いモノをしていた。
泡いっぱいのスポンジを持ち、食器を洗っている。
洗いモノを終え、身仕度を済ませると、玄関の外に出た。

「すみません、お待たせしました。」

玄関の前には、すでに、テギョンのブルーの愛車が停まっていた。

車は、ソウル郊外まで走り、目的地の修道院の庭園の前で、停まった。

車が停まった場所は、「好きでいることを、許可してやる!!」と、テギョンに言われ、ミニョの恋が叶った、懐かしい場所でもあった。

「すみません。ありがとうございました。帰りは、バスで帰りますね」

ペコリと頭を下げるミニョ。

「……その必要はない。」

「えっ?」

キョトンと、目をパチクリさせるミニョ。

「一緒に、行ってやるから、案内しろ」

「はい、わかりました」

ミニョが、嬉しそうに、ニッコリと笑った。



★★☆☆