「美男2」

「エスケープ」

*9*


メンバーが、バンから降りると、安全のため、警備員や男性スタッフたちが、メンバーたちを取り囲んだ。
それでも、ファンの黄色い歓声、報道陣のカメラのシャッター音、芸能記者の質問が飛び交う。

「ファン・テギョンさん、熱愛報道は、事実なんでしょうか?」

メンバー全員、あのジェルミさえも、無言のまま、歩いている。

パニックで押し寄せる人波に、ギュウギュウに押し潰されながら、メンバーたちは、なんとか、建物の中に入っていく。

「すべて、記者会見にて、発表させていただきますので、それまで、しばらく、お待ちください。」

建物の中は、関係者以外、完全にシャットアウトされた状態になっていた。
メンバーたちは、そのまま、練習室に向かう。

練習室のドアを開けると、すでに、先客が待っていた。

「よっ、お疲れ。外は、スゴい騒ぎだな」

そこに居たのは、ミナムだった。
ミナムは、裏口から侵入したため、外の蜂の巣のような状態から難なく免れてやって来たため、涼しい顔をしていた。

他のメンバーはというと、疲れてしまったのか、"はぁー"と、大きく息を吐きながら、ソファーに、座り込んでいる。

「ミニョ、大丈夫か?水、持ってきたぞ」

「だ…大丈夫。ありがとう」

ミナムは、頬を真っ赤に火照てらせているミニョを、心配そうに見つめながら、水の入ったペットボトルを手渡した。
他のメンバーより、身体の小さいミニョは、自分より身体の大きな警備員、男性スタッフたちに取り囲まれ、パニックの中を、余計に、揉みくちゃに押し潰されてしまっていたのだった。

程なくして、マ室長とワンコーディーが、部屋に入ってくる。

「お疲れ。社長がお呼びだぞ。あっ、シスターは、このまま、ここに、休んでいてください。」

マ室長は、まだ、ぐったりとソファーに座り込んでいるミニョに、声を掛けた。

「あとは、俺達に任せろ。お前は、ゆっくり、休んでおけ」

「ありがとうございます。」

ミニョの顔を、少し心配そうに見つめていたテギョンが、一番最後に、部屋を出ていった。


「ミニョ、また、あなたに会えるなんて…嬉しいわ。色々と、大変だったわね。コレ、あなたのバッグよね。バッグはこれだけ?」

「はい。大きい荷物は、すでに、アフリカの施設に送ってしまったので、それだけです。」

「そう。あなたの服がないようだから、衣装室から、何か持ってきてあげるわね」

「ありがとうございます。ワンさん。また、ご迷惑をかけてしまって…」

「あら、いいのよ。ついでに、可愛く、メイクしてあげるから。さすがに、そんなボサボサ頭のノーメイクで、行くわけにはいかないでしょ?」

なぜか、ウフフと嬉しそうに笑いながら、ワンコーディーは、部屋を出ていった。



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