「fate」

*47*

「Dear…」


入院も手術もしない。
その代わり、通院しながらの投薬治療を受けることになった。
余命は、手術を受けない分、短くなる。
でも、テファのそばに、いられるなら、それでも、いいと思った。
テファを、この世に、ひとり、取り残すことは、本当に、胸が痛んだ。
余命が決まってしまえば、後は、自ずと、やることは決まっていた。
テファに、負担を掛けないように、身体が動けるうちに、身の回りの整理をしていく。
テファが、これから先、困らないように、色々なことを、書き残していくことにした。
テファも、十分、成長してくれた。そこらへんを歩く、十代の女の子たちと変わらない。
恋だってするし、そのとき特有の悩みだってある。

父親について、聞かれることもあった。

すべてを話すことは、出来ないけど、テファが、誤解することなく、あのヒトを受け入れられるように、話した。

病魔は、時と共に、待つことなどなく、私の身体を、蝕んでいった。
思うように、身体も、自由に、動かなくなってきた。病床に伏せることも多くなってしまう。

「ねぇ、お母さんは、幸せだったの?」

テファに、聞かれたことがある。

答えは、決まってる。

「もちろん、"幸せ"よ。お父さんにも会えたし、あなたにも、出会えたわ。」

ねぇ、テファ

だから、あなたを産んだの。
あなたにも、感じてほしかったから…。

ヒトを愛すること。
ヒトに愛されること。

それだけで、ヒトの心は、満たされて、"最高の幸せ"を感じるのよ。

でも、あなたには、もっと、幸せになってほしいと、願っているのよ。
もちろん、結婚も、してほしい。
私も、私の母も、出来なかったから……。
あなたの美しい花嫁姿を、見たいけど、それは、残念ながら、叶えられない夢になりそうだけど…。

でも、私は、いつでも、あなたのそばにいるから…。

どうか、幸せに、なってね。



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