「fate」

*45*

「別離」


ホテルに着き、車を停め、シートベルトを外し、降りようとするが、ミニョは、、座ったまま、車から出ようとしなかった。
仕方なく、運転席に座りなおす。

「…ミニョ」

声を掛けるが、ミニョは、ずっと、俯いたまま、顔を合わせようともしない。

それは、思いたくもなかったが、拒否されているように思えた。

「ミニョ…」

「……ご結婚されたんですよね。おめでとうございます。」

ミニョは、俯いたまま、蚊の鳴くような小さな声で、告げる。

突然、言われ、疑問符が、頭に浮かび上がる。

"ヒジュとのことを言ってるのか…?"
"婚約が破棄したことを知らないままなのか…?"

「結婚はしてない。ヒジュとの婚約は、ずっと前に、破棄になったんだ。」

「嘘…」
小さな声で、呟いているミニョ。

"やっぱり、ずっと、誤解したままだったんだな…"

「ミニョ…会いたかった。ずっと、ずっと…会いたかった…。ミニョ…お前だけだ…。お前だけを、今でも、ずっと、愛してる。」

自分の今の気持ちを、素直に打ち明け、微笑みながら、ミニョの頬に、そっと、手で触れてみる。
触れた頬が、ひんやりと冷たい。
ミニョが、すぐに、そっぽを向いてしまい、触れていた手が、外れてしまう。

「ミニョ…」

振り払われてしまったことに、吃驚しながら、ミニョを見ると、身体を震わせ、首を、しきりに横に振っている。

「…ごめんなさい。…ごめんなさい。」

「何で、謝る…?謝らないといけないのは、オレの方なんだ。お前を…」

「…結婚…したんです。」

…結婚?

「ごめんなさい…ごめんなさい…」

そういうこと、か…。

お前は、違う相手を見つけて、幸せに暮らしているんだな…。

謝り続けるミニョを、ただ、呆然と見ていた。
高揚していた気持ちが、一瞬でなくなり、身体の力が抜けていく。

「送っていく」

「……いいです。大丈夫です。テギョンさん、これだけは、言わせてください。アナタに、会えて、本当に、良かったです。ありがとうございました。…どうか、お元気で。…さようなら」

ミニョは、深々と、頭を下げ、車から出ると、一度も、振り向かず、歩いていく。

クッ……

怒りに任せて、ハンドルを拳で叩く。
零れ落ちる涙を拭いもせず、漏れる声も抑えず、泣き叫んだ。


……このときは、知らなかった。
愛に勝る力が、嫉妬も越える暗黒な力が、ミニョの身体を、蝕んでいたことを…
もし、このとき、お前の嘘を見抜けていたら、お前は、今でも、ずっと、オレのそばにいてくれたか…?



★☆☆★

あぁ…皆さまの反応が、コワイわぁ…
((((;゜Д゜)))