「fate」

*20*

「安息」


仕事をする気さえ無くし、車を走らせ、着いた場所は、バーだった。
ホテルの駐車場に、車を停め、外に出る。
冷たい雨が、身体を濡らす。
バーは、まだ開店前で、準備をしている従業員に混じって、ミニョの姿があった。

「…ミニョ」

そう呼ぶと、オレを見て、不思議そうな顔をしながらミニョが、オレの元へやって来る。
何も言わず、ただ、ミニョを強く抱きしめた。

"オレにとって、必要なのは、コイツだけ…"

自ずと、抱きしめる力が、強まる。
ミニョが、少しだけ、身体を離し、オレを、見上げる。
大きな、キレイな瞳と、視線がぶつかる。
何も言わず、ただ、小さく微笑むミニョ。手を握られ、ピアノの前に、連れて行かれる。

一緒に座り、一瞬、オレを見ると、ピアノを弾きはじめる。

拙いピアノの旋律。
透き通った、優しい歌声。

ピアノを弾きながら、懸命に歌うミニョの姿を見つめていた。
不器用ながらも感じる、ミニョの優しさに、胸が熱くなる。
何も、聞かず、オレの表情だけで、ミニョは、オレの感情を汲み取ってくれたのかもしれない。

ミニョが歌い終わり、感謝を込めながら、ミニョの手をとり、キスをすると、そのまま、抱きしめる。

「今夜は、一緒にいたい。上で、待っている。」

今夜は、ゆっくり、眠りたかった。
薬の力を借りずに、愛しいモノを、胸に抱いて…。



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次回、アメ限です。
私が書くモノなので、アメ限にするほど、そんなに、甘くはないんですが、なんとなく、一般公開は…気が引けるので…。 ごめんなさい。m(。_。)m