「fate」

*12*

「face」


テギョンさんに言われたとおり、着替えを終えて、外に出ると、一台の青い車が、停まっていた。
運転席の窓が開いて、中から、テギョンさんが顔を出した。

「乗れ」

そう言われ、助手席の方に回ると、ドアを開け、乗った。

車は、ネオンで輝く中心街を走り、ある白い高い建物の地下の駐車場へと入っていく。

「着いた。降りろ。」

テギョンさんに言われ、車から降りる。

"ココは、一体、どこなんだろう…?"

「ココは、オレが、よく利用してるホテルだ。有名人のお忍びとして利用することも多いから、一般客とは、別の入口が用意されているんだ。」

ピンと背筋を伸ばし、堂々と歩く、テギョンさんの後ろ姿を見ながら、私は、ため息を漏らしてしまう。

"やっぱり、このヒトとは、住む世界が違うんだ"

と、改めて、思ってしまう。

"私には、やっぱり、場違いな場所だよね…一緒に行っても、大丈夫なのかな…?"

そんなことを考えてしまい、下を向きながら、のんびりとした歩調で歩いていたから、テギョンさんが、立ち止まったのも、気づかなかった。

「危ないな…。気を付けろよ」

テギョンさんは、小さなフロントで、従業員のヒトから、ホテルのカードキーを貰うと、ポケットに入れた。
グイッと、力強く、肩を掴まれ、エレベーターに乗った。

ふたりきりだけの空間に、ドキドキしてしまう。
目も合わせられず、ずっと、上を見上げ、光る階数を見ていた。

エレベーターが停まった。
ドアが開くと、目の前には、毛足の長いフカフカ絨毯の長い廊下。

テギョンさんに、肩を掴まれたまま、絨毯の上を歩く。
部屋の前に着くと、テギョンさんが、カードキーをポケットから取り出し、部屋のドアを開けた。

「うわぁ…すごい」

思わず声を上げてしまう。
目の前には、カーテンが開いた大きな窓。
そこから、街の夜景が見えた。
中に入り、窓に両手を付きながら、夜の街を眺めていた。
ビルや走る車が、ミニチュアみたいに、小さく見える。

"トン"

音を立てながら、自分の顔を挟むように、自分より大きな手がふたつ、窓に手を付いていた。

「…ミニョ」

耳元で囁かれながら、身体を反転させられ、背中を窓に押し付けられる。
すぐ、目の前には、テギョンさんの顔。
初めて、会ったときから、目を離せずにいた、キレイな、その顔が、目の前にある。
愛しい、その顔を、ただ、見つめているだけで、胸が、キューッと苦しくなってくる。
テギョンさんが、好きすぎて、苦しくて、苦しくて、どうしようもなくなる。

胸がいっぱいすぎて、今にも、涙が零れ落ちそうだった。



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