「ゴースト・エンジェル」

*25*

「星になる」


今まで、透けていたアイツの身体が、見えるようになっていた。
でも、アイツの背中の羽根が、気になった…。
アイツも驚いて、背中の羽根を見ていたが、すぐに、泣きそうな顔になっていた。

「あ、あの…もう、戻らないと、いけないんです…だから、お別れを…」

涙をいっぱい目に溜めながら、アイツが言う。

それぞれに、アイツが別れの挨拶をしていく。
ジェルミが、アイツの額にキスをして、シヌは、アイツの頭を撫でていた。

シヌとジェルミの別れの行動が、何気に腹が立つ…。

「…テギョンさん。色々と、ご迷惑をかけて、すみませんでした」

ペコリと頭を下げるアイツ。

「…全くだ」

得体も知らないコイツが来てから、オレは、コイツにも、振り回されてばかりだった。
でも、もう、これで、お別れだ…。
コイツに、もう、会うこともないだろう…。

「ココに居させてくれて、本当に、ありがとうございました…」

アイツが、深々と頭を下げた。
顔を上げることもなく、ただ、肩を震わせ、泣いているようにも、見える。

お前、元のいた場所に、帰れるんだぞ…。
嬉しいだろ…?

アイツの身体が、光を放ちはじめていた。

ただ、呆然と、その姿を見ているしかなく、刻一刻と時間が過ぎていく。

アイツの泣いている横顔を見ていると、あの真っ暗な庭で、見えない星空を見上げた、あの夜のことを思い出した。
アイツは、確か、星のハナシをしていた。

『いつか、私も星になるんでしょうか?』

『たくさんあるのなら、お前が星になっても、見つけられないな…』

『誰にも見つけられない、小さな星でも、いいです。』

アイツの、寂しそうな横顔。
アイツは、きっと、あのとき、泣いていたんだ…。

オレは、咄嗟に、アイツを抱き締めた。
微かに感じる、温かさ。
まだ、ココに、お前がいるのが、わかる。

「よく、聞けよ。星になるなら、オレが見つけられる星になれ。見ていてやるから。」

アイツが、泣きながらも、嬉しそうに、何度も頷いている。

「すごく、すごく、幸せでした。ありがとうございました。」

アイツが、微笑みながら、目を閉じる。
抱き締めている感覚がなくなっていく…。

次の瞬間、眩しい光を感じて、目を閉じた。

目を開けると、何事もなかったように、アイツの姿は、消えていた…。

「あっ…」

ジェルミが、ソファーの上から、何かを拾い上げる。

「天使の落としモノ」

ジェルミの掌には、一枚の白い羽根があった。

「はい、テギョンヒョン。」

ジェルミが、オレの掌に、白い羽根を置いた。

お前が、星になったとき、オレも、お前が見つけられる星にならないと、いけないな…。

ふわふわの白い羽根を握りしめる。

「今度、事務所の社長に会うことにする!!」

「…それって…」

オレは、驚いているふたりを見ると、意を決して、力強く頷いた。

「あぁ、メジャーデビューする!!あの、狭いライブハウスから、広いステージに立つんだ!!明日から、猛練習だ!!」

見てろよ!!ブタウサギ!!

お前よりも、輝くスターになってやるからな!!



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エピローグでは、テギョンたちの"その後"を追います。