「ゴースト・エンジェル」

*24*

「ありがとう」


"ありがとう"と"さようなら"を伝えないと…。
私は、寝ていたソファーから身を起こす。

「ミニョって、幽霊じゃなくて、天使だったの?」

ジェルミさんが、私がいる方をちゃんと見て、しかも、驚いていた。

"…ん…あれ…?ジェルミさんって、私が見えないハズなのに…天使ってどう言うこと…?"

私は首を傾げながら、自分の背中を見ると、白い羽根がついていた。

……!!??

自分でも、その姿に驚いてしまう。
でも、この姿になっているということは、やっぱり、ココには、もう、居られないらしい…。
現実を見た気がして、急に、淋しくなってきた。
でも、今は、泣くわけにはいかない。ちゃんと、言わないと…。


「…あ、あの…実は、もう、戻らないといけないんです。」

「うん、そのようだね」

シヌさんが、私を見て、頷いた。

「だから、お別れを…」

泣きそうになるのを、必死に堪える。

「すごく、すごく、楽しかったです。」

今は、私の頭の中には、走馬灯のように、ココでの思い出が駆け巡っている。

やっぱり、堪えることが出来ずに、涙が、溢れ落ちてしまう。
きっと、もう、このヒトたちには、会うことが出来ないから…。

「ジェルミさん、いつも、楽しませてくれて、ありがとうございました。」

「オレも、楽しかったよ。さぁ、ミニョ、笑って!!」

私は、泣きながらも、笑ってみせた。
ジェルミさんが、私の額にキスをしてくれ、ニコッと笑う。

「シヌさん、いつも助けてくれて、ありがとうございました。すごく、心強かったです」

「ミニョ、もう、大丈夫。きっと、ミニョが、帰りたい場所に、帰れるから…。心配しなくていいよ。」

シヌさんが微笑むと、私の頭をクシャクシャに撫でる。

「ありがとうございます、シヌさん」

私は、深々と頭を下げた。

最後に、テギョンさんに、顔を向ける。
いつものように、口を尖らしていた。

「テギョンさん、色々と、ご迷惑をかけて、すみませんでした…。」

「全くだ…」

テギョンさんが、鼻でフンと笑っている。

「ココに居させてくれて、本当に…ありがとうございました。」

頭を下げたまま、私は、顔を上げることが出来なかった。
いっぱい、伝えたいことがあったはずなのに、言葉にできなかった。

でも、時間が、刻一刻と過ぎていく。

"何か言わないと…"

テギョンさんへと、もう一度、顔を上げたとき、テギョンさんに抱き締められた。
驚きで、身を硬くしてしまう。
耳元に、テギョンさんの声が響く。

「よく聞けよ。星になるなら、オレが、見つけられる星になれ…。見ていてやるから。」

庭で話した、星のハナシ、覚えていてくれたんですね…。

真っ暗で何も見えないテギョンさんのために、明るく照らせる星になります。

嬉しくて、泣きながら、うんうん頷いた。

「本当に、すごく、すごく、幸せでした。ありがとうございました」

…もう、思い残すことは、ない。
ほんの少しだけでも、テギョンさんに、この想いが伝わっただけで、もう、十分だった。

目を閉じると、また眩しい光が見えた。

きっと、あの世界に、戻るんだろう…。

いつでも、見ていますから…。



☆★☆★

次回、テギョンさん側のハナシになります。

あと、エピローグを書いて、ハナシは終わります。

これが終わり次第、「Honey moon」定期連載しますので、よろしくお願いします。