「ゴースト・エンジェル」

*22*

「"幸せだった"」


「おい、起きろ!!家に着いたぞ!!」

また、テギョンさんの声が聞こえる。

なんとか、重たい瞼をあげると、間近にテギョンさんの顔が見えた。
テギョンさんの肩に凭れるように、私は、寝ていたらしい。

「…あっ…すみません…」

テギョンさんに頭を下げると、身体を離した。

「おい、歩けるか…?」

「…大丈夫…です」

車から降りると、襲ってくる睡魔と闘いながら、なんとか、家の中に入った。

でも、リビングのソファーを見つけると、私は、倒れ込むように、横になった。

どうして、こんなに眠たいんだろ…。

瞼が重くて…開けられない。

また、敵わない睡魔に誘われるように、私は、深い眠りについた。

私は、夢の中から、白い世界に戻っていた。

また、あの時と同じように、一筋の光がパァッと射し込む。
光が眩しくて、目も開けられない。

「おかえり、ミニョ。どうだった?」

…誰の声?

その声は、なぜか、とても懐かしく感じた。

「この世は、どうだった?」

…この世?

テギョンさんたちがいる世界のこと?

「すごく、すごく、楽しかったです。それに、初めて…恋を…恋をしました。この想いを告げることは、出来なかったけど…それでも、そばにいるだけで、とても幸せでした。」

テギョンさんのことを想うだけで、まだ、涙が、とめどめもなく流れ落ちるけど、"幸せだった"と、そう、思いたい。私は、そのヒトに、ニッコリと笑ってみせた。

「残念ながら、もう少しで、その方とは、会えなくなる。だから、ミニョ、もう一度だけ、行ってきなさい。そして、お別れをしてきなさい」

また、そのヒトと共に、眩しい光が消えて、白い世界も、真っ暗になった。


目を開けると、テギョンさんたちが心配そうに、私を見ていた。

ちゃんと、言わないと…


"ありがとう"と"さようなら"を…



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