「ゴースト・エンジェル」

*13*

「ブタウサギ」


演奏が終わったあと、アイツを見たら、ボロボロ泣いていた。

「あぁ…ごめんなさい。なんか…感動しちゃって…」

照れたように笑いながら、アイツは、慌てて、涙をゴシゴシ拭った。

「当たり前だろ!!
オレの音楽は最高なんだから!!」

そう言うと、アイツは、「そうですね」と、うんうん頷いた。

でも、素直に感動しているアイツを見てると、なんだか、嬉しかった。

いつもより気分良く、練習を終えた。

「暑いぃぃ!!疲れたぁぁ!!アイス、食べたい!!」

帰り道、ジェルミがそう言うので、仕方なく、近くのアイス屋に寄ることにした。

オレとシヌは、どっちかと言うと、甘いモノが苦手だから、こう言う場所には、興味がない。

「どれにしようかな…」

アイスが飾ってあるショーウィンドーを見ながら、ブツブツと呟くジェルミ。

もうひとり、食べれるわけないのに、瞳をランランに輝かせながら、アイスを見つめているアイツ。

どんだけ食い意地が張ってるのか、ショーウィンドーに顔を押し付けている。

しかも、顔を押し付けてすぎて、アイツの鼻がギュッと押されている。

"まるで、ブタの鼻みたいだな…"

ブタのような、ウサギのようなヤツ。

アイツの頭にウサギの長い耳と、ブタ鼻をつける…想像しただけで笑えてくる。

"ブタウサギ"

世界で一匹しかいない、しかも、この世に存在しない…オレだけが知っている、奇妙な"イキモノ"…。

ジェルミが、悩みに悩んだ末、買いものしている間、ブタウサギは、まだ、アイスに夢中だった。



★☆☆★