「ゴースト・エンジェル」

*11*

「新しい居場所」


アイツは、俯いたまま、泣いていた。
涙の雫が、ポタポタと膝へと落ちていく。

「…ミニョ、ココにいてもいいよ。今までいた場所に戻りたくないのなら、無理して、戻ろうとしなくていい。ミニョが喋れたように、記憶だって、そのうち甦ってくるかもしれない。それに、ココにいる間に、別の方法が見つかるかもしれないだろ…?」

気休めのようにしか聞こえない、シヌの言葉。
ジェルミも、シヌの言葉を聞きながら、うんうん頷いている。

おい、お前ら…そんな簡単に、コイツのこと、許可していいのか…?

このまま、この家に、取り憑くかもしれないぞ…?

そう考えただけで、ザワザワと、悪寒がした。

でも、コイツが、今までいた場所は、一体、どんな場所だったんだろう…。

俗に"天国"とかいう場所か…?

天国なんて、痛みも苦しみもない、穏やかで静かな場所のはずなのに…アイツは、戻りたくないと首を振っている。

"この世にだって、お前の居場所なんか、あるはずない!!"

…そう言ってやりたかったが、何処にいても、居場所がなく、ずっと、オロオロとしながら、所在なさげな顔をしているコイツを見てると、"少しだけ"可哀想に思えた。

「…はぁ…仕方ない。お前の居場所が見つかるまで、ココに居たらいいだろ…。ただし、これ以上、オレに迷惑をかけるなよ!!ただでさえ、お前みたいなヤツが現れて、オレは、迷惑しているんだからな…」

「…あ、ありがとう…ございます…。テギョンさん、シヌさん、ジェルミさん」

また、ウサギのように、目を真っ赤に潤ませながら、アイツが微笑んだ。

やっぱり、"ミニョ"より、"トッキ"の名前の方が、コイツに似合ってる気がする。



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