「ゴースト・エンジェル」

*6*

「忘れもの」


ユ・ヘイさんがテギョンさんの腕を組むと、部屋を出ていく。

綺麗なストレートロングヘアに、可愛いお花のピン留め、スタイルも良くて、ミニのワンピースから出ている細長い脚も、ヒールの高いサンダルも似合っていた。

女の私から見ても、可愛いヒト…。

テギョンさんとヘイさん、きっと、誰から見ても、お似合いのカップルなんだろうな…。

そう思うと、胸に、チクチクと棘が刺さったような痛みを感じる。

ふと、自分の格好を見ると、ため息を吐きたくなった。
髪は長いけどボサボサで、いつも同じ白いワンピースと白いサンダル。

オシャレしてみたいけど、出来ないんだよな…。

可愛らしい格好をしているヘイさんが、とても羨ましく思った。

「どうしたの…?」

はぁ…ため息を吐いていると、シヌさんに声を掛けられ、私は、慌てて、首を振った。

「そうだ…キミは、なんでココにいるか、わからないんだろ?」

私は、頷いた。

「この世を彷徨っているヒトたちは、大体、この世に、"忘れもの"をしているんだ。」

…忘れもの?

「例えば、誰かに"伝えたかったこと"があったり、この世で"やりたかったこと"や"やり残したこと"があったり…」

…伝えたいこと
…やりたかったこと

「キミにもあるはずなんだ。」

私は、名前以外、記憶を失っているのに…。

一体、どうしたら、いいんだろ…?

頑張って、思い出そうとしても、やっぱり出来なくて、私は、首を振ってしまう。

「大丈夫。ゆっくり、見つけていこう。オレも、協力するから。この世にいる間は、オレたちの家で暮らせばいいよ。」

優しそうに笑うシヌさん。

「オレも、協力してあげる!!」

ジェルミさんの明るい笑顔。

私は、ふと、テギョンさんの不機嫌そうな顔を、思い浮かべてしまう。

きっと、また怒らして、迷惑かけてしまうんだろうな…そう思うと、返事に、躊躇ってしまった。



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