「ゴースト・エンジェル」

*1*

「未知との遭遇」


「…ミ……」

名前を呼ばれた気がして、目を覚ました。

そこは、色さえもなくした、ただの白い世界だった。

…なぜ、自分が、この場所にいるのか、わからなかった。

これまでの記憶がなくなっている。

家族の顔も、幼い頃の思い出とかも、すべてが、リセットされ、消えてしまったようだ…。

覚えているのは、自分の名前だけ…。

ずっと、誰かが、私を「ミニョ」と呼んでいた。

だから、自分の名前は、「ミニョ」だと、そう、確信していた。

それ以外の記憶は、何もない。

…この世界と、一緒だ。

ココの世界には、誰も存在しない…。
私…ひとりだけが、切り取られたように、ひとりだけ、取り残されてしまったから…。

この世界の出口は、見つからない。

そんな、ある日、眩しい光が、この世界に射し込んだ。

眩しすぎて、目も開けられないような、強い光。

強い光が、私を包み込むように、何処かへと、連れていく。

次に、降り立った場所。

そこは、真っ暗で、でも、誰かがいるような気配はする。

「おい!!!お前!!!何者だ!!何処から、入ってきた!?」

ひどく怒っているような声色に、ビックリして、心臓が、ビクンと跳ねてしまう。

「おい!!!お前、聞こえてるのか!?」

…私のことを、言っているの?

不思議に思いながらも、その声がする方に、顔を向ける。

"トントン"

ドアをノックする音と共に、女の人が入ってくる。

「ファン・テギョンさん。誰と大声で話しているんですか…?」

「看護婦さん!!不審な人物がいるんです!追い出してください!!」

"ファン・テギョン"そう呼ばれた男の人が、私に、指先を向けてる。
女の人が、怪訝そうに辺りを見回す。

女の人が、私を見たはずなのに、首を傾げていた。

「ファン・テギョンさん、誰もいないみたいですよ。たまに、患者さんに、いらっしゃるんですよ。事故の後遺症で、幻覚を見る場合もあるんです。どうぞ、落ち着いてください。ゆっくり、お休みになれば、きっと、良くなりますからね」

そう言って、女の人が出ていく。

「そこに、いるはずなのに…」

ブツブツ呟くような声。
そして、私に、まだ向けられている、痛いくらいの鋭い視線を感じ、私は、ビクビクしながら、彼と顔を合わさないよう、俯くしかなかった。

どうやら、ファン・テギョンさんにだけは、私の姿が、見えるようだった。

…でも、私は、ファン・テギョンさんの言うように、一体、何者なんだろう…?



☆★★☆

皆さま、今回のハナシ、どうでしょうか?

ちょっと、浮世離れした不思議なカンジで、ハナシは続いていきますので…。

不思議なモノ(ミニョ)が見えるようになってしまったテギョンさんですけど、これから、シヌヒョン、ジェルミが登場する予定です。