『happiness』

「Birthday」


「マンマ…マンマ…」

ユエが、グズっている。

いつもなら、飛んでくる母親のミニョが、今日は、いない。

「ユエ、ママは、買い物だぞ」

代わりに来たのは、父親のテギョン。

涙で濡れたユエの顔を、指で拭うと、抱き上げる。

背中をポンポン優しく叩きながら、リビングへと移動する。


数十分後、ミニョが荷物を抱えて帰ってくる。

「マンマ、マンマ」

「ただいま、ユエ。すぐにご飯、作るからね」

ミニョが、エプロンをしながら、キッチンに向かう。

今日は、ユエの1歳の誕生日。

テギョンは、ユエの誕生日に、おもちゃのピアノを贈った。

テギョンの指が、おもちゃのピアノの鍵盤を叩いて、音を鳴らすと、不思議そうに、ピアノとテギョンを見ている。

もう一度、テギョンが音を鳴らすと、自分で鳴らそうと、両手で鍵盤を叩いて、鳴った音にキャッキャッ大喜びする。

最近、ユエの表情が豊かになってきた。

「ユエ、ご飯できたよ」

「はい、あーん」

ミニョが、ユエの口に、ニンジンを運ぶと、口を閉じて、イヤイヤをする。

「最近、好き嫌いするようになったんですよ。今のとこ、食物アレルギーはないみたいなんですけど、オッパと同じでニンジンとほうれん草がキライなんです。」

他の食べ物は、パクパク食べるのに、ニンジンだけが残る。

「ユエ、ニンジンも食べないとダメだぞ」

テギョンが、ユエの口にニンジンを運ぶとイヤイヤする。

テギョンが、パクッとそのニンジンを自分の口の中に入れる。

「あぁ、おいしかった」と言うと、もう一度、ニンジンをユエの口に運ぶ。

ユエが、パクッと、イヤな顔をしながら、ニンジンを食べる。

「えらいなぁ、ユエ」

テギョンが笑いながら、ユエの柔らかい黒髪を撫でる。

テギョンが、ユエをお風呂に入れて、ミニョが寝かしつける。

「ユエ、お誕生日おめでとう。あなたが生まれてくれて、ママは、とても嬉しかったのよ。ありがとう、生まれてきてくれて…。きっと、これからも、どんどん大きくなるのね。」

ミニョが、優しくトントンと、リズム良く、ユエを叩きながら、眠りに誘っていく。

スースー眠りについたユエの髪を撫でると、額にキスをそっと落とす。

「愛してるわ」

ミニョが、そっと、ユエに囁くと、立ち上がり、ドアを閉めた。



★★☆★