『happiness』

「gift」

*13*


「あと、もう少しですよ、頑張って!!!」

ミニョは、最後の力を振り絞って、息んだ。

「おんぎゃぁぁぁ…!!!」

元気な産声をあげる赤ん坊。

「おめでとうございます。元気な男の子ですよ」

女医が、ミニョに声を掛ける。

"あぁ…良かったぁ…元気に…生まれて…くれて…"

ミニョが、安心したように、息を吐くと、気を失った。


ミニョが、気がついた時は、病室のベッドだった。


ミニョは、キョロキョロと目だけ動かすと、右腕に、点滴のチューブが繋がっていて、その先に、大きな、温かい手が、ミニョの手を包み込んでいた。

ミニョの手を握ったまま、ベッドに顔を突っ伏して眠っているテギョンの姿があった。

ミニョは、自由のきく左手を動かすと、そっとテギョンの黒髪に触れた。

テギョンが、ミニョの身動きに気付き、目を覚ますと、顔をあげた。

「…ミニョ」

テギョンが、安心したように、ミニョに、微笑んだ。

「よく、頑張ったな…」


テギョンが、ミニョの髪を優しく撫でる。


「ありがとう…お前のおかげで、"いとおしい"と思えるものが、増えた…」


ミニョは、微笑みながら、頷いた。

病室のドアをノックする音が聞こえる。

テギョンが、ドアを開けると、女医とベビーベッドを運ぶナースがいた。

「さぁ、赤ちゃんを抱っこしてあげてください、お母さん。」

女医に言われ、ミニョは上体を起こすと、ナースに抱き方を教わり、我が子を受け取った。


「ユエ、やっと、会えたね。」


初めて抱いた、我が子の、温かいぬくもりを感じながら、ミニョが、瞳を潤ませた。


「ユエ、今日は、あなたが生まれた大切な日よ。生まれてきてくれて、ありがとう。」

ミニョが、小さな声で、ユエに囁きかける。


テギョンには、我が子を抱いているミニョの姿が、あまりにも美しく見えていた。

"きっと、母親になって、輝きが増したんだろうな…"

テギョンが、ミニョの姿に見惚れていると、ミニョと視線が合った。

ミニョが、テギョンに嬉しそうに笑いかける。


テギョンが、優しく、ミニョに微笑むと、そっと、ミニョの肩を抱き寄せ、そっと口づけをした。


今宵は、満月。

新しく誕生した月(ユエ)と、その両親を、優しく見守っていた。


☆★☆★


さぁ、無事、誕生しました。

「gift」・誕生編は、これにて終了です。

次回から、ユエの成長記録でも、書いていこうと思います。

そちらも、是非、よろしくお願いしますね。