『happiness』
「gift」
*9*
ミニョは、リビングのソファーで日記帳を開いていた。
日記には、毎日の出来事と、成長の記録が記されている。
臨月になったミニョのお腹は、パンパンに膨れあがっていた。
"ひとりでも、こんなに大きいのに…ふたりは、もっと大変だったんだろうな…"
ミニョは、子どもを授かってから、よく自分の母のことを思い出していた。
ミニョの日記帳に、大事に挟んである、たった一枚だけの母の写真。
ギターを抱え、優しく笑み浮かべながら、カメラに顔を向けている母、イ・スジン
「…お母さん」
ミニョが、指で写真を撫でる。
お母さん、私は、ちゃんと「お母さん」になれるかな…?
本当は、不安でいっぱいなの…。
このコを、ちゃんと育てていけるかな…?
ちゃんと愛せるかな…?
お母さん…
会いたいよ…
少し開けていた窓から、風が入ってくる。
その風が、涙で濡れた、ミニョの頬を優しく撫でる。
ミニョが顔をあげ、窓を見つめると、夏のまぶしい太陽が、ミニョの顔を照らす。
ミニョ…
あなたには、見えないかもしれない。
でも、本当は、いつでも、あなたのそばにいて、あなたを見守っているの。
本当は、あなたが、辛いときや寂しいときは、ギュッと、あなたを抱き締めてあげたい。
…ごめんね。
何も、出来なくて…。
でも、忘れないで…
どんなに遠く離れていても、あなたの声は聞こえているわ。
その声に、答えることは、できないけど、私は、いつでも、あなたのそばにいるわ。
そして、ミニョとミナムの幸せを、ずっと祈ってる。
ミニョ、あなたなら、大丈夫。
きっと、優しい母親になれるわ。
あなたが、私に愛されたかったように、あなたのコも、あなたに愛されたがってるの。
だから、限りのないの愛で、そのコを包んであげてね。
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