『happiness』
「gift」
*7*
ソウル公演最終日。
ミニョは、マ室長の運転する車で、裏口から会場に入った。
すれ違うスタッフたちに挨拶をしながら、ミニョは、楽屋のドアをノックした。
「うわぁ!!ミニョだぁ!!!」
ジェルミが、いつものようにミニョに抱きつくために駆け寄ろうとしたが、すでに、シヌの手によって足止めされていた。
「やぁ、ミニョ。見ないうちに、また、お腹が大きくなったな」
シヌが、ミニョのお腹を見ながら言う。
ジェルミが、ミニョのお腹を触ろうと手を伸ばすと、どこからともなく現れたテギョンの手が、バシッと、ジェルミの手を叩き落とした。
「何するんだよ、テギョンヒョンのケチ。触ってもいいじゃん」
ジェルミは、テギョンに叩かれて赤くなった手を擦った。
「お前が触ったら、子どもに、お前のバカが感染るだろ」
チェッと口を尖らすジェルミを無視し、テギョンは、ミニョを椅子に座らした。
「大丈夫か?腹は、張ってないか?」
テギョンが優しくミニョのお腹を撫でる。
「はい、大丈夫です」
そこに、ミナムとヘイが、楽屋に入ってくる。
「おぉ、ミニョ、元気か?また、腹がでかくなったな」
ミナムが、ミニョに気付く。
「ヘイさん、こんにちわ」
ミニョが、ヘイに頭を下げる。
「あら、ミニョ、元気?テギョン、そこ、どいてくれる?」
ヘイが、テギョンを強引にどかし、ミニョの隣に座ると、ミニョのお腹を撫でた。
「また大きくなったわね、今、何ヵ月だっけ?」
「8ヵ月です」
「もう、動くでしょ?」
「はい。ポコポコお腹を蹴りますよ。」
そこに、ワンも現れて、ミニョとヘイと一緒に、仲良くガールズトーク。
ヘイによって追い出されたテギョンは、腕を組んで、口を尖らしながら、3人を見るしかなかった。
「そろそろ、本番入りますので、お願いしまーす」
スタッフが、A.N.JELLに声を掛ける。
「私は、会場の席から見ないといけないから、またね、ミニョ」
ヘイがミニョに手を振りながら、楽屋から出ていく。
「さぁ、オレたちも行かないと」
シヌが、ミナムとジェルミの真ん中に入ると、両手を広げ、ふたりの肩を持ちながら出ていく。
ワンも、そっと楽屋から出ていく。
楽屋に残ったのは、テギョンとミニョのふたりだけ。
「頑張ってきてくださいね。成功を心から祈ってます」
「あぁ、行ってくる」
テギョンが、軽くミニョの唇にキスを落とすと、ミニョに笑いかけ、一瞬で、A.N.JELLの「ファン・テギョン」の顔に切り替わった。
ミニョの身体を気遣って、会場ではなく、ステージの袖に、椅子を用意してもらい、そこに座っている。
"聴こえてるかな…?あなたのパパの歌声。ママにとって、あなたのパパは、いつまでも、キラキラと輝くお星さまのようなヒトなのよ。"
ミニョが優しくお腹を撫でながら、ステージで、キラキラと輝く、テギョンの姿を見つめていた。
☆★☆★