短編
イケメン版「美女と野獣」
*9*
食堂の中は、薄暗く、テーブルには、ロウソクだけが置かれていました。
テギョンは、席に座り、少しだけ緊張した面持ちで、ミニョを待っています。
扉が開く音が聞こえ、そちらに顔を向けると、ミニョの姿が見えました。
ミニョが、恥ずかしそうに顔を俯かせながら、中へと入っていきます。
テギョンは、ミニョのドレス姿を、ミニョの頭のてっぺんから爪先へと見ています。
テギョンは、ミニョのドレス姿に、満足そうに笑うと、立ち上がりました。
ミニョの椅子を引き、ミニョを座らせます。
食事がふたりの前に並べられます。
テギョンが、咳払いをすると、話しはじめました。
「今朝は、あ、ありがとう」
「い、いえ、キズは痛みませんか…?」
「だ、大丈夫だ…お前は、シスターなのか…?」
「は、はい。シスター見習いで、まだ正式なモノではありませんが…」
ふたりのぎこちない会話が続いていきます。
すると、どこからか音楽が流れはじめます。
"音楽が流れはじめたら、ミニョ様の手を取り、踊るのですよ"
先ほど、テギョンはマ執事に、段取りを聞かされてました。
"踊れって…どうするんだ…?"
テギョンは、席から立ち上がると、ゆっくりとミニョの前に、歩いていきます。
テギョンが、無言で手を差し出しますが、ミニョは、首を傾げます。
テギョンが、ミニョの手を強引に取ると、ミニョを連れて、広間の真ん中までいきます。
ミニョの空いた手を、自分の背中に回し、テギョンは、ミニョの腰に手を回し引き寄せます。
急接近した身体に、ミニョが恥ずかしそうに、顔を真っ赤にしながら、俯いてます。
「踊れるか…?」
ミニョは、首を振ります。
テギョンがミニョをリードしながら、ゆっくり円を描きながら、広間を回ります。
ミニョが顔をあげると、そこには、テギョンの顔が間近にありました。
テギョンがミニョの視線に気づき、少しだけ微笑みます。
ミニョは、目をパチパチさせながらも、嬉しそうにテギョンを見てました。
そんな、初々しいふたりの姿を、物陰から覗くマ執事の姿がありました。
"よし、これで、ふたりが愛しあえば、魔法が解ける"
しかし、ミニョは、城に、長く留まることはありませんでした。
テギョンは、ある日、ミニョに魔法の鏡を渡します。
「この鏡は、なんでも映す鏡だ。お前は、シスターのことが気になっているんだろ…?」
ミニョは、鏡を覗くと、シスターの現在の姿が映し出されます。
苦しそうに、顔を歪めて、ベッドに寝てるシスターの姿がありました。
テギョンは、今にも泣き出しそうなミニョに声を掛けます。
「お前を、この城から、解放してやる!!さっさと、この城から出ていけ!!!」
テギョンは、踵を返すと、ミニョから離れて行ってしまいました。
「ご主人様、なぜ、ミニョ様を帰したのですか…?」
マ執事が、テギョンに声を掛けます。
「いつまでも、城に閉じ込めておく理由もないだろ」
テギョンは、また一枚散ってしまったバラの花を見つめています。
"愛するヒトは出来た…でも、愛してくれるヒトは…"
テギョンは、窓から、城を出ていくミニョの姿を見つめていました。
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