短編
イケメン版「雪の女王」
*4*
北の山奥に、氷で出来た宮殿がありました。
ミナムは、宮殿の中に足を踏み入れます。
「うぅ…寒い…」
ガタガタと寒さに身体を震わせながら、ミナムは、奥へと進んでいきます。
また一段と、寒さが強くなります。
奥の部屋に、雪の魔王の姿がありました。
「お前は、誰だ?」
「私は、この氷の宮殿に住む主(あるじ)…そなたの顔、どこかで見覚えがあるな…」
雪の魔王が、じっくりとミナムの顔を見ます。
「あぁ、この娘と顔が似ているのだな」
雪の魔王の背後には、氷で出来た寝台に眠っているミニョの姿がありました。
「ミニョ!!!」
「この娘の名は、ミニョというのか…」
雪の魔王が、冷えた手で、ミニョの頬に触れます。
しかし、ミニョはピクリとも動きません。
「ミニョ…?」
「この娘には、心のない人形だ…かろうじて、生きてはいるようだが…」
「ミニョを…妹を返せ!!」
「それは、出来ぬ…この娘には、この宮殿で私とともに生きていくのだ!!さぁ、この宮殿から、一刻も早く去るのだ!!!」
「イヤだ!!ミニョは、生きてる!!」
「なんと、小癪な!!!」
雪の魔王が、強力な呪文を唱えます。
天井から、巨大な氷柱がいくつも落ちてきます。
ミナムは、氷柱を避けながら、ミニョの元に走っていきます。
「ミニョ…ミニョ…」
耳元で声を掛けても、ピクリとも動かないミニョ。
「お願いだ…目を、目を覚ましてくれ…」
ミナムの瞳から、涙の雫が落ちます。
それは、ミニョの心臓に、目に、手に、落ちていきます。
鏡の欠片が、ミナムの涙によって、溶かされていきます。
ミニョが、ゆっくりと瞬きを繰り返しながら、目を開けます。
「お兄ちゃん…」
ミナムの頬に、優しく手を当て、ミニョが、ゆっくり微笑みます。
「な、目を覚ましたのか…」
雪の魔王が、目を見開いて、ミニョを見ています。
「あなたは、誰…?ここは、どこ…?」
ミニョが、不思議そうに、雪の魔王を見ます。
「ミニョ、ここから出るぞ!!」
ミナムがミニョの手をギュッと掴むと、出口に向かって、走りはじめます。
「逃がすか!!!」
雪の魔王が、天井から、巨大な氷柱を落としますが、徐々に、宮殿が崩れはじめ、出口が塞がれていきます。
「キャッ!!」
「うわっ!!」
間一髪で、ふたりは、宮殿の外へ…。
雪の魔王は、崩れた宮殿の下敷きに…。
「帰ろ、ミニョ!!」
「うん、お兄ちゃん!!」
ふたりは、手を取り合い、故郷へ帰っていきました。
★おしまい★
☆★☆★