短編
イケメン版「人魚姫」
*5*
ミニョが、悲嘆に暮れていました。
"海に帰ろう…でも、どうすれば、帰れるのだろう…"
ミニョは、ズキズキ痛む足を引きずりながら、城を出ていきます。
長い時間を掛け、海辺まで、やっと、たどり着きます。
砂浜に、腰を下ろし、ぼんやりと、広い海とユラユラと海に映る月を見つめていると、そこへ、ミニョの姉のワンがやって来ます。
「かわいそうな、ミニョ。失恋をしてしまったのね…」
ミニョが、大粒の涙をこぼしながら、頷きます。
「元の姿に、戻りたい…?」
コクンと頷く、ミニョ。
「わかったわ…。ファラン様から伝言があるの…。貴女が人魚に戻る方法を聞いたの…。まず、貴女の髪を、引き換えに…」
ワンがミニョに、短剣を差し出します。
ミニョが、短剣を手に取り、自分の髪を切りはじめます。
ミニョの胸の下まであった長い髪は、ショートカットへと変わっていました。
「その短剣で、王子を刺すのよ…。王子の流した血によって貴女は人魚に戻れるわ…」
ワンが、ミニョを残し、海へと消えていきます。
"この短剣で、テギョン王子を刺さないと私は、人魚になれない…"
短剣を、悲しそうに見つめるミニョ…。
そして、夜が明けていきます。
城では、今日、テギョン王子とユ・ヘイの結婚式が開かれます。
ミニョは、ふたりの結婚式を遠くで見ているしか出来ません。
幸せそうなテギョン王子の顔…ふたりの幸せそうな誓いのキスを、ミニョは、今にも泣きそうな顔で見ていました。
"私には、愛するテギョン王子を殺めるなんて…出来ないわ…さようなら、テギョン王子…どうか、お幸せに…"
ミニョは、その場から、ひっそりと姿を消しました。
海に映る、満月がユラユラと波によって揺れる夜。
ミニョは、暗い海に身を投げました。
ミニョの身体は、海底へと沈んでいき、その姿を、泡へと姿を変え、やがて、"空気の精"となり、天国へと昇っていきました。
★おしまい★
★☆★☆
書き終わりました。
原作どおりに、そのままのラストです。
ハッピーなラストを期待した皆さま、ごめんなさい。
ミニョが可哀想すぎて、報われない恋が、ホントに、切なくて…(泣)
書いている方も、ホントにツラかったです…。