短編

「キミのトナリで…」

*テギョン*side



今日は、久々のオフ。
オフになると、いつも合宿所にやってくるお前…。


「どこかに出かけるか?」


オレがお前にきく。すると、お前は、いつも首を振る。

「ココでいいです。だって、テギョンさん、疲れているのでしょ…?無理して出かけることはありません」

ニッコリ笑いながら、そう言うお前。

"いつも、オレの部屋でつまらなくないのか?"

"お前は、オレに遠慮してないか?"


オレは、椅子に掛かっている自分のコートと、お前の上着とバッグを持つと、半ば強引に、お前の腕を引っ張り立たせ、部屋を出た。

「ちょっと、出掛けてくる」

リビングを通るとき、他のメンバーに声をかけ、オレは、お前を車の助手席に乗せ、夕闇の中、車を走らせる。

着いた先は、前にお前と行った、あの映画館。


薄暗い館内。お前が、オレの手をそっと掴む。

「ここは、暗いですからね」

実は、だいぶ見えるようになってきたことは、お前に秘密にしてある。
たまに、離れていってしまうお前の手をギュッと握る。

カップルシートに座ると、お前が、オレと距離を空けて座る。

気にくわない!!

オレは、お前の腕を掴むと、こっちに引っ張った。


「キャッ!?」

お前がバランスを崩して、オレに寄りかかってくる。
顔を真っ赤にするお前に、笑ってしまう。

オレは、お前の肩に手を回し、何事もなかったように、映画に集中する。


たまに、横を見ると、照れてるのか、顔を逸らすお前。


映画が終わると、屋上へと向かう。

まだ寒さが残る、この季節。
屋上には、誰もいない。

屋上のベンチに腰かける。

お前は、オレの顔より、口を開けて、夜空の星ばかり見てる。

"おい、すぐとなりに、輝く星があるのに、お前は、気づかないのか…?"


オレは、冷えてかじかんでいるお前の手を取り、コートのポケットの中に突っ込む。

お前が驚いて、オレを見る。

「今日は、星がよく見えるのか?」

オレは、目を細めながら、夜空を見上げる。


「よく見えますよ。たくさん星が見えますが…でも、私には、いつも、ひとつの星しか見えません…」


夜空から目を外すと、お前の顔が見える。

心なしか、お前の顔が、泣きそうな顔をしている。

「…ミニョ」

お前の名前を呼び、そっと顔を近づける。
お前の冷えてしまった唇に、そっと唇を重ねる。



お前を家まで送り届ける。

今度は、いつ会えるか、わからない。

別れ際に、お前で心が満たされるように、お前を抱き締める。

"本当は、いつも、お前のトナリにいたい。"

"お前から、離れたくない。"

"でも、ずっとお前を傍においておけないから…"


"だから、どんなときでも構わない…。"

"淋しくなったら、ちゃんと声をきかせてくれ"

"そのときは、必ず、お前のトナリにいくから…"



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