イケメン版

「ロミオ&ジュリエット」

*第二十九話*

「あなたの元へ…」

ミニョは、教会から屋敷に戻ると、ミジャに、頭を下げました。

「伯母様、すみませんでした。私、我が儘を言ってしまったようです…。シヌ様は、とても優しい御方です。きっと、私を幸せにしてくれるでしょう…。教会に出向いたとき、偶然、シヌ様にお会いし、結婚のご挨拶をしてきました…。」


ミジャが、嬉しそうな顔で、ミニョを抱き締めます。

「わかってくれたんだね、かわいい、私のミニョ…。シヌ様と幸せにおなり。
さぁ、結婚式の準備をしなくては…」

ニコニコ笑うミジャに合わせるよう、ミニョも、ニッコリと笑顔を向けます。
結婚を大いに喜ぶミジャには、ミニョの笑顔の裏にある秘め事に、気づくことはありませんでした。



そして、結婚の前夜…


その夜、ミニョの部屋では、ワンと共に、結婚式の準備をしていました。


「ミニョ様、本当に、よろしいのですか?」

「……何がですか?」

「シヌ様とのご結婚…」

「えぇ…。あの御方のことだけを想い、連絡をとることすら出来ず、ただ、ただ、待ち続けているのも、疲れきってしまいました…。やはり、私たちは、結ばれることのない相手だったのです…。それに、もう覚悟は決めたのです。お兄様のことを考えると…やはり、私が、この家を支えなくてはいけないのだと…」

ミニョの顔は、どこか吹っ切れたようにも見えます。

「ミニョ様……」

ワンが心配そうに、ミニョを見つめます。

「ワンお姉様…明日も、色々と準備に忙しいので、私は、早く寝ようかと思うのですが…。」

「そうですね、明日もきっと忙しいですから…早めに休まれた方がいいかもしれませんね…」

ミニョが、ベッドの中に、入り込む。

「おやすみなさいませ、ミニョ様」

「おやすみなさい」

ワンが、部屋の灯りを消し、頭を下げ、扉を静かに閉めます。


ミニョは、フゥーと溜め息を吐くと、薬瓶を取り出しました。

ミニョは、心の中で、自問自答を繰り返します。


"本当に、この薬を飲んでしまってもよいのかしら…"

"もし、このまま、眠りから覚めなかったら…"

"…テギョン様に、もう、会えくなってしまうの…"
ミニョは、首を振ります。

"でも、もう、決めたのよ…"

"薬を飲んで、長い眠りから目覚めたとき、私の目に映るのは、ただ、ひとり…"

"……テギョン様、待っていてくださいね…"

ミニョは、意を決して、薬を飲み干します。
そして、意識を失うように、ベッドへと倒れ込みます。ミニョの手から、滑り落ちた薬瓶が、床の上を転がっていました。


…必ず

…また

…貴方の

…元へ


★…☆…★…☆