事項:重層的支援体制整備事業について

【要旨】 ①事業の全体像について

②事業実施に向けた組織改編・スケジュールについて

③課題対応の事例と事業効果について

 

【質問】

 近年、私たちを取り巻く環境は、少子高齢化や人口減少などの社会構造が変化する中で、核家族化や価値観の多様化などが進み、地域社会における人々の繋がりや地域に対する関心が薄れてきています。また、新型コロナウイルス感染症の流行により、その流れは更に進行しているものと考えております。

そのような状況のもと、社会的な孤立が進むとともに、人々が暮らしていくうえでの課題が複雑に絡み合い、また課題を持つ個人やその家族を含めて、幾つもの課題を抱えることとなっています。

これらの複雑で、複合化した課題に対応するためには、これまでのような個人を対象とする制度や、それぞれの分野による縦割りの法制度や支援体制では対応が難しいため、令和2年6月に公布された改正社会福祉法により、地域共生社会の実現に向けて、包括的な支援体制の構築を推進するために「重層的支援体制整備事業」が創設されたところであります。

これまで他の議員からも、ひきこもりやニートなどの社会的孤立の問題、高齢の親とひきこもりの子どもが同居する8050問題、病気や障がいの親や兄弟の世話をする子どものヤングケアラーの問題などの質問をされてきましたが、その答弁の中においても、重層的支援体制での取組により対応していくことが述べられ、また令和5年の新庁舎1期工事完了後の移転に合わせて、体制整備できるように努めていきたいとのことでありました。

複雑化・複合化している困難な課題を抱える本人や家族にとりましては、早期の対応や解決を望まれているとともに、包括的な支援体制の内容に関心を持っておられることと考えております。

そこで、重層的支援体制整備事業に関して質問をさせて頂きます。

 

①  重層的支援体制整備事業といっても、なかなか事業イメージがしにくい部分もあるかと思います。断らない包括的な支援体制として、相談支援や地域づくり事業などが連携しながら実施されるものと思いますが、まずは重層的支援体制整備事業の全体像についてお聞かせください?

【市長答弁】
従来の福祉制度では高齢者や障がい者といった個人を対象とした支援が中心となっておりますが、いわゆる8050問題やダブルケアなどは、個人に着目した支援だけでは、ニーズに応えることができず、こうした複雑・多様化する世帯の課題にも対応していくための仕組みづくりを目指すものであります。具体的には、いくつかの事業で構成されており、1つめは包括的相談支援で、各分野における直接的な支援制度がない場合でも断らずに相談を受け止めるもので本市では「福祉なんでも相談室」などで実施しております。さらに相談等を待つだけでなく支援が届いていない方へのアウトリーチ等を通じた継続的な支援も一部実施しているところであります。
 2つめは、地域づくり事業で複雑化する課題等に対して地域での受け皿となるもので、本市では「きずなと安心の地域づくり応援事業」において地域での見守りや助け合う力の醸成に努めてきたところであります。

 3つめとしては、複雑に絡み合う課題などに対し、これらの事業を一体的に取り組むための中核となる多機関協同事業で、今回、市として新たに拡充する部分であります。具体的には、行政だけでなく福祉関係機関、地域、NPO等の幅広い支援機関で構成する支援会議の場で、各機関の役割を整理し、支援プランの作成等を行うことにより包括的な支援体制の整備を図ってまいります。また、この会議の事務局には多くの支援機関との調整や進捗管理をするためのコーディネーター役をはじめ、専門職の配置により体制を強化したいと考えております。

 

②  これまでの答弁で述べられていますが、事業実施に向けた体制整備を図るうえにおいて、組織の改編や実施スケジュールなど、現時点で示すことができる内容についてお聞かせください?

【市長答弁】
今年度は重層的支援体制に向けた研修会などにより関係機関や職員の意識の醸成やネットワークづくりを図った参りました。今後、令和5年4月からの実施に向けて、重層的支援体制の中核である多機関協働事業の事務局を新たに設置したいと考えております。

  組織体制としましては、まず社会福祉課の所管する地域福祉と生活保護の部門を切り離し、それぞれ専門性を持たせてまいりたいと考えております。

 その上で、先ほど申しました事務局には統括機能としてのコーディネーター役をはじめ、福祉や教育分野などの専門職を配置することで分野を横断する課題にも対応できる体制にするとともに、これまで断らない相談窓口である「福祉なんでも相談室」を所管させ、包括的相談支援との連携を図ります。

  そして、その事務局と地域福祉の部門を1つの組織にまとめることにより、地域福祉に係る諸事業のほか、関係機関、庁内の他部門などとの連携がさらに促進できるものにしたいと考えております。

③  重層的支援体制が整備されることにより、直ぐに複雑化した課題が解決できるものではないと思いますが、現在の対応がどのように変わるのか、事例を挙げながら教えてください。また事業を実施することによる効果などについてお聞かせください?

 

【市長答弁】

  例えば、80歳代の高齢の親と50歳代の長年引きこもっている子どもが同居しており、親は医療や介護が必要にも関わらず、子どもが心配で治療に専念できない家庭の場合で申し上げます。

 現行制度では、親は介護のケアマネージャーなどに相談をいただければ必要な介護サービス等を利用していただけます。しかしながら、子どもの引きこもりへの対応は、ケアマネージャーでは対応できず、別途、相談機関や居場所を探す必要があります。
 重層的支援体制が世ビされれば、ケアマネージャーが多機関協働事業の事務局に連絡することで事務局が各支援機関の調整・総括役を担い、親への支援としてはケアマネージャー、地域包括支援センターなどが、また子どもへの支援としては福祉なんでも相談室、ハローワーク、障がい相談支援事業所、脱ひきこもり支援センターなどが、支援機関の構成員となり、個々の支援ではなく世帯を包括的に支援する観点から、重層的支援会議で協議・検討することになります。

 こうした重層的支援体制が効果的に機能するには、できるだけ多くの関係機関の参画を得るとともに、各機関への周知が肝要となることから、そうした点も含め、住み慣れた地域で安心して生活を維持できる繋がりのネットワークを整えてまいりたいと考えております。