す【介護人材確保に向けた取り組みについて】

厚生労働省は昨年7月に2040年度に介護職員が約280万人必要となり、現状と比較して約69万人が不足するとの推計を発表しました。本市におきましても、第9次高齢者福祉計画・第8期介護保険事業計画で令和2年9月末現在の65歳以上人口は、21.783人、高齢化率は26.9%と超高齢化社会となっていることが記されており、今後の推計では、令和12年(2030年)に75歳人口が13.769人と最も多くなるとともに、高齢化率も上昇し続け、令和22(2040年)には30%を超えると見込まれます。総人口が減少する中で高齢人口がピークを迎えるとともに、介護ニーズが高まることが推察されます。と明記されております。
 日本は既に超高齢社会を迎えていますが、今後も更に高齢化は進んでいきます。介護にまつわる課題も多様化しています。現在の人材不足が続けば、介護が必要な高齢者が増えているのに、介護職員が圧倒的に不足した最悪の状況になりかねません
 令和2年度の介護労働安定センターの「介護労働実態調査」によると
介護職員処遇改善加算を活用して、最も多いのは、「一時金の支給」の62.2%ですが「諸手当の導入・引き上げ」の60.2%に続き、「基本給の引き上げ」が41.9%3番目に多くなっています。しかし、これらは介護職の短期の定着率に向上するもので、中長期で介護職の確保、定着率向上を考えた場合、介護職員の社会的評価を上げない限り、慢性的な人材不足は解消しないばかりか、介護現場の人材不足は更に深刻化するおそれがあります。

 介護の分野で人材が不足するもっとも大きな理由は、採用の困難さです。公共財団法人 介護労働安定センターが実施した「令和2年度介護労働実態調査」によれば、調査対象の事業所の86.6%が採用の困難さを人材不足の要因として挙げています。その前年に行われた同調査では88.5%であったことを考えると、採用の難しさが人材不足の課題となっていることがわかります。採用が困難になる理由としてはまず、同業他社との人材獲得競争が激しく、必要な人材が確保できない点があります。少ない介護の人材を多くの施設が取り合う形になっています。さらに他の産業と比較しても労働条件が厳しいのも採用難の原因と考えられます。
 多くの介護職の人は高齢者や人の役に立ちたいという思いで職を選び、一所懸命働いています。しかし、重労働で腰やひざなどを壊してしまい、残念ながら離職せざるを得ない人が多くいるのが現状です。現場の話を聞くと、仕事のやりがいや若い人たちや他職種からの参入を促す意味でも、介護職の社会的評価を上げてほしいという声を多く聞きます。では、どうすれば、社会的評価が上がるのでしょうか。
 介護に対する社会的な認識の中に、「介護業務の専門性」や「プロとしての業務」よりも「家族が行なうことの代行」という考え方が今も強く残っているからではないでしょうか。介護職の社会的な評価をより高めることで、更に多くの優秀な人材が集まるという好循環が期待されます。介護の仕事に従事される方々は、日常生活を支える介護技術を必要とすることはもちろん、感染症への対応や看取りケアなどを行うために、医療に関する専門的な知識や技術も求められます。また、これからの介護職には経験だけに頼らず、科学的な根拠に基づいて質の高いサービスの提供も求められると考えます。たとえば医療ではできない人的ケアによって、健康寿命を大きく伸ばし、認知症になっても社会参加を果たすことへの職務を担っていると認識しています。

 

【質問1】介護職の社会的評価を上げることの必要性についてのお考えと今後の施策についてお伺いします


【質問2】本市での介護の仕事の魅力発信などによる普及啓発に向けた取組や

  介護人材確保に向けた取り組みについてお伺いします

【市長答弁】まず「介護職の社会的評価を上げることの必要性について」でありますが、議員ご案内のとおり介護職の採用は困難な状況にあります。この要因としては厚労省、社会保障審議会がまとめた「2025年に向けた介護人材の確保」によると、介護には一面的なマイナスイメージが流布されていること、介護に対し夢見る生徒が少ない上に、保護者や教員も就職先として勧めることに抵抗があると指摘され、そのことが介護人材不足につながっていると存じます。しかしながら、介護職は高齢者を支援し、ひいてはその家族、地域、社会全体を支える重要な役割がある専門職であり、実際に働いている方々はプライドを持ち、魅力を感じておられます。また働きながら資格取得を目指したスキルアップも可能であり、介護職には大きな可能性があります。したがいまして、介護の仕事は専門的な職業であるとの認識のもと、社会的評価を上げるための施策としましてはネガティブイメージの払拭が肝要と考えており、国の施策においても多様な人材層に対し介護職への理解促進とイメージアップを促進し、参入促進を図ることは喫緊の課題であり、介護職の社会的評価の向上に重点を置いた取り組みを進めるとされています。
 このように、「顔後人材確保に向けた取り組み」は、国・府・市で総合的に取り組む必要がありますが、市としましては、「介護職のイメージアップ」、「潜在的有資格者および、未経験者への就労支援」、「介護人材の離職防止、定着促進」の3本柱で具体的な取り組みを行っております。「介護のイメージアップ」については毎年、様々な年齢層の目に触れやすい広報「長岡京LIFE」に介護従事者のインタビュー記事を掲載し、市民全体に発信しております。また、若年層への働きかけとして、中学生に向けた魅力発信チラシの配布は、昨年度はコロナ禍の影響でできませんでしたが、替わりに立命館高校1年生の生徒には総合学習プロジェクトの一環にて配布ができました。今後とも若年層へのアプローチは続けたいと考えております。
 「潜在的有資格者および未経験者への就労支援」として、市内介護事業所を参加対象とした就職フェアを実施しており、京都府が行う就職フェアとの周知連携も図っております。昨年度は15の事業所が参加し、37の来場者がありました。この就職フェアでの仕事のマッチングは1件でしたが、この就職フェアをきっかけに、その後につながったケースもあるとお聞きしました。参加事業所や来場者へのアンケートからは、傘下について概ね満足のいくものであったという回答を得ています。
 「介護人材の離職防止、定着促進」では、国としては賃金改善や、労働環境改善、資質の向上、研修や能力評価におけるキャリアパス等加算制度を充実し、各事業所で活用されているところです。一方当市で行ったアンケート結果では、正職員の比較的若い方の離職率が高い傾向がみられたため、仕事を長く続けていくには職場内での良好な人間関係の構築や充実が不可欠と考え、よりよい職場づくりや事業所間での顔の見える関係づくりを目的に、市が主催し、管理職級、リーダー級、新人級と階層別研修を行いました。参加者のアンケートでは業務に役立つ内容であったと回答を得ています。なお、効果検証の一つの目安として、市独自で市内介護事業所において離職率の調査を行ったところでは、令和2年度の平均6.0%に比べ、令和3年度は平均5.0%と改善がみられる結果となっています。
 これら介護人材確保事業は昨年度から実施しているものであり、継続して実施していくことでそれぞれの柱において事業評価をし、今後の方向性を検討してまいりたいと考えております。