【白石たづ子】

私は平成27年の第5回定例議会で、本市議会では初めてインクルーシブ教育について取り上げさせていただきました。

 

 ◆平成27年12月定例会(12/9)白石たづ子一般質問「インクルーシブ教育の理念について市長と教育長の御認識について、またその課題について」

 

 

その際、インクルーシブ教育の理念について、またインクルーシブ教育を推進するに当たり、本市の課題があるとすればどのようなことなのかを、市長と前教育長にお考えをお伺いしております。新たにご就任された西村教育長のお考えもこの場でお伺いしたいと存じます。
 

あらためて、インクルーシブ教育とは、障がいの有無にかかわらず、「誰もが望めば合理的配慮のもと、地域の普通学級で学ぶ」ということを表しています。2006年12月の国連総会で採択された「障害者の権利に関する条約」で示されたものであります。
 

合理的配慮とは何か、何を優先して実現していくのかなどの共通認識も必要でありますが、一人ひとりの特性も違い、対応も違ってきます。今の教育の現状で、障がいのある子供たちは、支援学校や別の教室で教わることの方が多いと考えますと、通常の学級に通う子供たちは、日常生活の中で、障がいのある人と触れ合う機会が少なく、障がいのある人に対してどのように接したらいいのかわからないまま大人になってしまいます。そのことが障がい者雇用や社会参加を阻害する要因の一つになっているとも考えられます。

 

重度の障害のある子供や、保護者の方が通常の学級より特別支援学級や学校がいいと考えることもあるでしょうし、その子にあった手厚い体制が整っている方が良いという考えも否めませんが、誰もが生き生きと暮らしていける共生社会の実現のためには、障がいのある個人が、自分の住んでいる地域社会の教育機関で、一人の住民として当たり前に学べるよう環境整備への共通認識も必要であります。

 

そのようなことが次世代を担う子供の権利と利益が最大限尊重され、SDGs(持続可能な開発目標)全体のテーマでもある「誰一人取り残さない」という基本方針の実現に向けた視点でもあり、支え合う力や、互いの良さや多様性を認め、協働する力を育むことによりインクルーシブ社会の構築につながるものと考えております。

【白石たづ子 質問】
 

質問4

障害のある子供だけでなく、すべての子どものニーズに応じた教育的支援を充実させ、同じ場でともに学び、ともに育つ、インクルーシブ教育の理念を推進するにあたり、教育長のお考えをお伺いします。

【教育長 答弁】

◆インクルーシブ教育の理念を推進するにあたっての考え


すべての人々が互いの人権や尊厳を大切にし、互いに支え合い、自立し、誰もが生き生きと生活できる共生社会、その実現に向けて学校教育が果たすべき役割は大きく、期待も大きいと考えております。

 

共生社会の実現に向けては、インクルーシブ教育システムの理念が重要であり、その構築のためには、学校では特別支援教育を着実に進める必要があります。また、同じ場で共に学ぶことを追求しつつ、個別の教育的ニーズのある児童生徒等に対し、自立と社会参加を見据えて、多様で柔軟な仕組みを整備することが必要であります。

 

本年1月の文部科学省の「新しい時代の特別支援教育の在り方に関する有識者会議」の報告においても、「障がいのある子どもと障がいのない子どもが可能な限り共に教育を受けられる条件整備」や、「障がいのある子どもの自立と社会参加を見据え、一人ひとりの教育的ニーズに最も的確に応える指導を提供できるよう、通常の学級、通級による指導、特別支援学級、特別支援学校といった連続性のある多様な学びの場の一層の充実・整備」を着実に進めることなどが求められております。
 

また、本市においては今年度からスタートした第2期教育振興基本計画において、「インクルーシブ教育の視点を踏まえた理解教育の充実に努める」こととし、特別支援教育の充実に取り組んでいるところでもあります。

 

一人ひとりの教育的ニーズに応じ、障がいによる学習上または生活上の困難の改善・克服を図りながら個性や能力を最大限に伸ばすことができるよう、例えば学校においては、特別な支援が必要な児童に対して、特別支援学級や通常学級での配慮の必要な児童への個別支援を行う「学校教育支援員」の配置や、また、全小学校と中学校(2校)内に設置している「通級指導教室」など、障がいの有無にかかわらず、共に学ぶ機会の創出にも努めているところであります。

 

また、この間、学校の中で障がいについて理解を深める「あいサポート運動」や、特別支援学校との交流、福祉学習(パラスポーツ体験<ボッチャ>、手話体験、車いす体験)など、様々な取り組みを通して、子ども一人ひとりが多様な物事の見方や考え方ができるような取り組みもすすめているところであります。

 

さらに、本年度からタブレット端末を用いて、児童生徒の個別の特性・ニーズに応じた学習支援を行うことも容易になり、個別最適で効果的な学びの実現が図られ、インクルーシブ教育の一助になると期待するところでもあります。

 

いずれにしましても、インクルーシブ教育の理念を推進していくためにも、多様な学びの整備と合わせ、児童生徒の状況を把握しながら必要な支援を行ってまいりたいと考えております。
 

【白石たづ子ノート : 一般質問を終えて】

 

折しも、この質問通告書を提出した翌日に参議院本会議で「医療的ケア児及びその家族に対する支援に関する法律」が可決されました。「医療的ケア児」を法律上で明確に定義し、日本の歴史上始めて国や地方自治体が医療的ケア児の支援を行う責務を負うことを明文化した法律です。

 

人口呼吸器や経管栄養等の医療的ケアを日常的に必要とする子どもは近年増加し、全国に約2万人いるとの報告がありますが、看護師等の配置をしている保育所はまだまだ少なく、医療機関ではない保育所で医療的ケア児に安心で安全を確保することは非常にむつかしい状況です。

 

幼いころより日常的に子どもたちが医療的ケア児に関わることで、お互いが必要とすること、互いの違いを認め合いながら集団生活を営み、自立心や社会性を身に付けていくことは重要と考えます。また、この法律の施行によって、保護者の就労の機会や社会参加も可能になってきます。
 

2016年4月に施行された「障害者差別禁止法」これに定められた「合理的配慮」として、保育施設における医療的ケアが含まれ、同年6月の「児童福祉法改正」では、医療的ケア児の保健、医療、福祉その他の各関連分野の支援体制の整備が、地方公共団体の努力義務とされています。

 

医療的ケア児と家族へのインクルーシブな支援の関心の高さから法整備は進んでいくものの、支援の具体的な施策は進んでいるのでしょうか。この法律が明文化されたことによって、いかに具体的な施策に落とし込んでいくのか、環境を整えていくのか、という事こそが地方自治体の責務でしょう。その共通認識を求めて、再質問とさせていただきました。