【白石質問】

少子高齢社会の中で「買い物弱者」の問題があります。それは、高齢者や様々なハンディを抱えておられる方々が移動手段を持てずに買い物に行けないという状況のことで、国では「最寄りの食料品店まで500メートル以上離れ、車の運転免許を持たない人」、「流通機能や交通網の弱体化とともに、食料品などの日常の買物が困難な状況に置かれている人々」と定義しております。

国の2015年調査によると、全国の買い物弱者の推計値は824万人で、2010年調査と比べて約200万人増加しており、今後更に増え続ける見通しとなっております。この問題は、過疎地にとどまらず、交通手段の比較的豊かな地方の中心市街地でも起きており、長岡京市においても例外ではありまん。問題の解決には、NPOなどの活動に期待するだけで済む問題ではないと考えます。なぜなら、総務省が2016年に継続中の193事業について15年度の収支を調べたところ106は赤字だった。「黒字または均衡」と答えた30事業も補助金などで赤字を穴埋めしており、7割に当たる136事業が実質的な赤字だったという報告があります。

買い物弱者問題の具体的な解決方法としては、

・第1に宅配、買い物代行、配食など家まで商品を届けるシステムの構築、
・第2には移動販売や買い物場の開設など、近くにお店をつくること、
・第3には移動手段の提供により家から出かけやすくする環境の整備を図ること、
・第4にはコミュニティの形成をすること、
・第5には基盤となる物流の改善・効率化を図ることが挙げられます。

高齢者には、自分で歩くことはできても、買ったものを持って歩くことには負担があります。高齢ドライバーの自動車事故が相次ぐ中、運転免許証の自主返納が注目を集めています。免許返納を考えているが、買い物などのことを考えると手放せないとのお話を伺います。買い物に行くにも、病院に行くにも、駅へ出るにも、特に高齢者の方はご苦労をされている現状があります。

(1)長岡京市の買い物弱者の実態を現状どのように把握されているかをお伺いします。

介護保険の予防事業でこれまでにも掃除や買い物、調理といった家事支援サービスを提供することはできましたが、それだけでは必要なサービスを十分にカバーできていないのではないでしょうか。

高齢者の単身世帯化、公共交通の経営合理化による貧弱化、高齢者の免許返上などが進む中、買い物弱者を巡る状況も変化しています。「買い物弱者対策」の長期的な取り組み支援を行うべきであると考えますが、ご見解をお伺いします。

買い物弱者対策の肝となるのは、いかに地域の足を確保するかだと考えます。また、買い物弱者対策を考える上では、高齢者福祉、地域商業、交通確保、地域活性化など様々な方面から総合的に検討を行う必要があると考えます。地域で組織横断的な支援が必要だと考えますが、ご見解をお伺いします。

(2)買い物弱者対策は今後どのように考えて検討されているのかをお伺いします。


【答弁:健康福祉部長】

(1)「本市の『買い物弱者』の実態と現状について」

国や自治体において、どのような方を買い物弱者と位置付けるかについては統一的な基準がなく、日常の買い物に不便を感じるか否かは、その方の健康状態や、交通機関の利便性などの生活環境、更には家族構成等が関係してくることから、買い物弱者の実態を正確に把握することは、非常に困難であると考えている。

本市では、近くにコンビニエンスストアや個人商店がなく、大型店舗まで遠くて行きづらい方や、心身の状態から買い物に行きたくても行けない方などは、宅配業者による自宅への配達や、玄関先まで商品を届けてくれる移動スーパーなどを、利用されている方も多いと聞いている。

しかし、高齢者世帯や一人暮らし高齢者の方にとっては、心身の状態の急激な変化などにより、買い物に出かけることが難しくなる可能性や不安などを抱えておられることは認識している。

今後は、高齢者福祉計画策定に伴う「高齢者アンケート調査」などにおいて、実態と現状の把握に努めてまいりたいと考えている。


「高齢者に対する長期的な取組み支援について」

買い物弱者の増加は、
1.高齢者の外出頻度の低下による引きこもりの増加。
2.商店までの距離が遠くなることによる転倒・事故のリスクの増大。
3.食品摂取の多様性の低下による健康状態の悪化
など、多くの課題があるものと考えられている。

比較的コンパクトで、利便性の高い地域である本市においても、今後、高齢化の進展とともに重要な課題になってくるものと思っている。しかし、こうした課題は、短期的な対策で解消されるものではなく、長期的な視点からの持続的な取組みが必要と考えているため、現在、実施している「高齢者配食サービス事業」なども含め、どのような対応ができるのか、研究して行きたいと考えている。

【答弁:総合政策部長】

(2)「『買い物弱者』対策について」

今後の買い物弱者対策について、総合的な検討を行う必要があるのでは、との指摘だが、ご案内のとおり、高齢者をはじめとする買い物弱者には、引きこもりにならないよう、まずは外出してもらうことが大切である。また、地元や民間業者の協力も不可欠であると考えている。

一方で、これらを満足させるための環境づくりは、一朝一夕に整うものではないものとも考えている。

市では、少子高齢化が進展する中、将来にわたり安定して日常生活に必要なサービスが受けられるような、まちづくりの仕組みを意識し、「立地適正化計画」を策定し、「はっぴいバス」や「東部バス」の本格運行など、公共交通によるネットワークづくりに努めて来た。

また、高齢者の移動支援の目を向ける中、高齢者運転免許証自主返納支援事業においても、今年度から市内タクシーの割引券も選択できるよう、サービスの拡充を図って来た。

民間においても、近年、市内に大型店舗の出店、移動販売の開設、また、社会全体では、高齢者層に目を向けた、ネット販売、宅配サービスなど、新たな買い物環境や商業環境も改善しつつあるのでは、と考えている。

いずれにしても、本市では、健康長寿プラン2025を策定の理念である、全庁的に課題意識を共有する中で、住み慣れた地域で安心していきいきと暮らしていけるまちづくりを進めていくこととしている。この中で、ご指摘の「買い物弱者への視点」も視野に入れながら、各施策を進めていくことが肝要だと認識している。また、その際は、行政のみならず、地域資源の活用や社会情勢の動向等も見定めながら進めていくことが合わせて重要な視点であると考えている。