平成31年2月13日、行政視察2日目は、東京都葛飾区に『自信と誇りを育む葛飾スタンダード』について視察に伺いました。
 
【概要】
葛飾区について。
・東京都区部(23区)の一つで、その東部に区分される。
・人口約45万人

葛飾区は、子どもが学校での生活や学習において、義務教育終了までにこれだけは身に付けてほしい、また、それをよりどころにして努力してほしい生活・学習の規準を定めることで、自信と誇りあふれる人づくりを目指す「葛飾スタンダード」に取り組んでいます。
 
自信と誇りを育む葛飾スタンダード

取り組み例には下記のようなものがあります。

1. 授業のはじめに、「ねらい・めあて」を板書して学習することを明確にする。
2. 授業では、教師の発問をもとに児童・生徒がじっくりと考える時間を確保して、主体的な活動をする場を効果的に取り入れる。 
(A) 既習事項を活かして課題に取り組む活動。 
(B) 課題について調べたり、考えたり、書いたりする活動。
(C) 調べたり、考えたりしたことを、話し合い学び合う活動。
(D) 調べたり、考えたりしたことを発表し合う活動。 
(E) 体験的な学習や作業的な学習をする活動。
3. 授業の終わりに、学んだことを振り返らせ、板書等により整理する。

取り組みの目的は、これらを葛飾区全校で統一して実施することにより、全体のレベルの底上げをし、学校によって学力の差が出ないようにすることです。

振り返りの授業では、例えば4年生の授業についていけない児童には3年生の振り返りを、また十分でないところまでさかのぼって、児童生徒に自信が持てるようになるまで問題を解くことを中心としています。
 
 
「かつしかっ子チャレンジ」の取り組みについて
『かつしかっ子チャレンジ』とは、各学年で身に付けるべき基礎・基本を中心に、子どもが努力を続ければ達成できる学習内容を整理したものです。全ての学習の土台となる国語、算数・数学、英語、体力で構成され、家庭でも取り組みやすい内容を選んで組み立てられています。 この「かつしかっ子チャレンジ」に示した学習内容の定着に向けて、毎年「チャレンジ検定」実施し、合格者には合格証が渡されます。 全員が「チャレンジ検定」に合格できるよう、教師が粘り強く子どもに寄り添い、一人ひとりの学習を支援し、子どもが自信と誇りをもてるようになることを目指しています。


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2つの学校の視察から見えてきたもの・感じたこと
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英語教育について
子どもたちが本当に楽しそうに授業に参加しており、ストレス解消の場になってはいないかとの思いもよぎりました。
小学校段階での英語教育実施については、中央教育審議会において「国語力の育成との関係を懸念する」との指摘がなされています。また、教員や保護者の意識調査では、約4割が「正しい日本語を身につけることがおろそかになると思う」と回答しています。
これに対し、教育課程部会の必修化賛成派は、英語を学習することは、国語力の育成と対立的にとらえるべきではないのではないか、広い意味での言語についての感覚が高まり、国語力の育成に良い影響を与えるのではないかとの意見を示しています。


日本のTOEFLの平均スコアはアジア諸国の中で下から2番目です。このことから、日本人の英語運用能力は国際的に見て十分でないと考えられます。また、日本人自身の一層の国際化および国際社会で活躍する人材の養成のために、国家戦略として英語教育の充実を図る必要があるとの指摘もあります。

国際共通語としての英語は、次代を担う子どもたちが身につける「21世紀を生きぬく力」の一つとして必要ではないでしょうか。ただ、他の教科と同じように成績を点数化することに関しては、他の教科がおろそかになる懸念もあるため、成績評価の如何や手法については一考を要するという意見に賛成です。
 
身についた英語力を用いて、母国語である国語を始めとした我が国の多種多様な言語や文化、他国の言語や文化に対する理解を深め、積極的にコミュニケーションを図ろうとする態度、国際理解を深めることを重視するという考え方もあるのではないでしょうか。短期的な成果ではなく、将来的に国際感覚が身についた、積極的にコミュニケーションが取れることを期待するのも大切な事だと感じます。
 
葛飾区の取り組みに関して
『葛飾スタンダード』という、教育委員会の熱意が感じられる取組でした。
教師が粘り強く子どもに寄り添い、学校独自でドリルを作り、徹底した振り返り学習を行うことにより、児童・生徒に『できる』意識と『自信』を持たせる、この取り組みの成果で、英語・数学を除いた各教科でD層が減少したということです。つまり全体の底上げができたということになります。数学はまだD層の横ばいが続いていますが、積み重ねの教科のため、振り返りに時間がかかるのだろうと推察しています。

長岡京市の学校教育
本市の状況はどうでしょうか。全体の学力底上げのためにも、小学校10校、中学校4校で、葛飾区のような『チャレンジ検定』を導入してみてはどうかと考えます。振り返り授業の徹底も取り入れてもらいたいところです。ですが、今日の学校教育の現場では、教師が、多様な特性に応じた子供たちへの対応、さまざまな家庭環境に応じた保護者への対応、いじめや不登校、児童虐待など、複雑化・多様化する諸課題への対応が求められています。

新学習指導要領の実施に伴い、主体的・対話的で、深い学びの実現に向けた授業改善や、小学校外国語教育の充実などに対応するための時間の確保も必要となって来ます。どこまでを学校に期待するのか、学校教育の役割は何なのか、将来を担う子どもたちを社会全体で育むためにも、今後形を変えていく学校教育は、すべての人が関心を持ち、議論していくべき課題なのでしょう。