数日間、一心不乱にパソコンへ向かっていたオット。
早めに寝床へ入る日があるかと思えば、夜中に突然起き出して「眠れない」と訴えに来る日もあった。何時間も昼寝しているかと思えば、朝の4時や5時に起きてそのまま本を読む日もある。自分でもおかしいと思っているようで、「またこれは落ちる兆候では」とイヤな顔をする。
それはワタシもイヤだ。
いっぽうで、仕事仲間の資金繰りが苦しいという相談に対して、公庫を利用する方法などを教えたり、人に対して親身になっている。毎月あるイベントにも、今月は痛くて参加できず、自分の資金繰りも不安なのに。
そうこうしているうちに、夜になってバイク屋さんが訪れた。
そして・・・・バイクを持って帰っていった。
去年、あれほど大騒ぎして、ローンを組んで買った高額なバイク。自分好みに何度もいじり、自慢げにしていたものを。しかも走行距離は、1万キロには遙かに満たない。つまり、ほとんど乗っていないバイクだ。
「バイク、売ったの」
「ああ。肩が痛くて乗れないから」
「体が治れば、また乗れるんじゃないの?あれだけ欲しがって、やっと手に入れたものなのに」
「オレの体と合わないから乗っていてしんどいんだよっ」
「そう・・・・でも、もったいないね」
ワタシがそう言うと、機嫌が悪くなる。
それ、買う前から分かってたんじゃないの?
試乗もしてるんだしさ。それでも欲しくてたまらないから、自分でローンを組んで買ったんじゃない。ワタシが反対したときは、カタログやバイク雑誌をビリビリに破いて部屋中に撒き散らし、荒れ狂ったくせに。
これなら、乗りたいときにレンタルしても良かったんじゃないの
あのころは、とにかく買い物衝動が激しかった。やたら物を買ってくるし、反対すれば激高する。その繰り返しだった。
バイクはとりあえずショップで委託販売ということになるらしいけれど、いつ売れるか分からないし、売れたところで買った値段の何分の一だろう。おそらくローンを完済できるほどにはならないだろう。
とにかく本人にとっては、その時「欲しい」と思えば居ても立ってもおられず、手に入れないと気が済まないのだ。それをなだめるのはほぼ不可能ってことは、サポ妻さんの多くが経験していることだろう。
こういうムダも、指摘すると怒るから放っているけど。
この日は、がっくりと来たらしく「飲まずにはおられない」と、ノンアルコールビールを買ってきて「マズイ」と言いながら飲んでいた。それでも、本物ビールをガマンしたことは誉めてあげよう。
と思っていたのに、翌日はワタシが和食の用意をしていたら「今日は洋食が食べたかったのに」と不機嫌になる。さらに翌日は、仕事の打ち合わせに出たものの、自分が思うようにことが進まなかったらしく、怒りまくって帰ってきた。
新規に仕事を始める相手先は、どうにも意志が伝わらず、失敗ばかりするというのだ。
5時頃また出かけたかと思えば、7時ごろ帰ってきてまだ怒りながら寝てしまった。
酒臭い・・・ヤケ酒をあおったようだ。
ダメじゃん。
結局、食事もしないで眠ったままだったが、午前0時前に起き出して入浴し、突然仕事を始めた。
「今ごろからがんばるの?」と聞いても返事もせず。2時ごろまでパソコンに向かい、相手先へ図面をFAXしたあと、また寝てしまう。
明くる日は朝ちゃんと起きたけれど、しばらく外出してからずっと昼寝。夜も11時ごろに寝てしまった。
ケガをしてからこっち、睡眠はぐちゃぐちゃである。
さらに翌日は、寝ころんで漫画を見ていたクセに、ハハがデパートで弁当を買ってきたのを見て不機嫌になる。ハハも買い物依存症的なところがあるので、「何も買ってこなくていいよ」と言っていても、週末は必ずデパートへ行ってどうでもいいものを買ってくる。それが、オットの機嫌が良いときならスルーだけど、悪いとてきめんである。
弁当の包みを見たとたん、「頭が痛い」
「身体的に痛いの?それともハハの買い物で?」
「どっちもだっ」
そして「○○ホテルで寿司バイキングをやってるだろう。あれが今日までだったから行きたかったのに。また婆さんの悪い虫が湧いてるんだか」と怒る。
昼間、今日は何が食べたいか聞いたときには、そんな話は全くしなかったのに。まるで、弁当を見て急に“怒りたい原因”を探し出したかのようである。
結局、「夕食はちゃんとリフォームするから」と、料亭弁当2包みをばらして煮物や白和え、酢の物、茶碗蒸しに化けさせて供した。でもオットは
「いくら見た目が変わっても、中身は一緒じゃ」と、いかにも不服そうに不味そうに食べていた。
そして「今夜は寝られそうにない」と睡眠薬を出すので、ホットミルクとテアニンを一緒に飲ませる。
なのに、なのに。
このところ頻繁に合っている知人から電話がかかり、午後10時半頃になって出て行ったオット。
戻ってきたのは午前2時を回っていた。
まだほど遠い、寛解。