今日はたぶん、落ち気味だ
ワタシが帰ってきたときから元気はなかったけれど、一段と。
だからワタシもメールの整理などをしていたが、早めに切り上げて夕食の支度をする。
オットは散歩を済ませ、犬に餌をやってくれる。
でも、ドライフードにかけてやる缶詰がないので、「あれはどこへやった」と聞いてくる。
昨日開けた缶詰、昼間に野菜の端切れが出たのでそれと一緒に煮ておいたのだ。ちょっと前まで、野菜クズと煮干しや鰹、昆布(もちろんだしを引いたあとの)などを煮てやっていたのだが、このところ食いつきが悪くなり、肉缶詰を少し混ぜてやっていたのである。
「ここに煮てあるよ、野菜と一緒に」
とたんに眉間のシワの深さが3割り増しになる。ハガキでも挟めそうだ
「どうして煮たんだよっ。こいつが残しても知らないぞっ」
怒っている。
「大丈夫だって。肉の風味がしているから喜んで食べるよ」
犬はニオイを嗅いで、猛烈な勢いで食べ始める。程なくキレイになめ取って完食した。
ね。いい缶詰だから、おいしそうなニオイで食べちゃうんだよ。
オットは自分が怒った手前、憮然としている。そしてテーブルの前にどっかと座ってTVを点けた。
珍しい、自分からTVを点けるなんて
そう思いながら「お待たせ」と食事をテーブルに並べ、食べ始める。ワタシは缶ビールを取り出したけど、オットはグラスだけ置いてそのまま座っている。どうやらすでに飲んでいるらしい。
「ビールは飲まないの?」
「もういいっ」
「何本飲んでるの?」
「2本だ。だからワインを飲む」
「ワイン、冷えてないけど・・・」
「どうして冷やしてないんだよ」
「いや、今日のメニューは焼酎のソーダ割りかなと思って・・・」
おっと、眉間のシワがいっそう深くなる。
だからワタシは戸棚からワインを取り出し、グラスに氷を放りこんでワインを注いだ。うちの買い置きワインなんて安物だから、こういう荒いことをしても大丈夫なのだ。
オットは無言でグラスを傾け、無言で食事を始めた。
しばらくして見ていた番組が終わり、A姫が始まった。オットがこんなのを見るはずがないので、ワタシは録画に切り替えて、プログラムを見ながら
「これ、あんまり面白くないよね」と、最近始まったコメディ物を指す。オット、無言。そんなわけで、毎週見ている30分もののカルチャー番組を表示させた。
5分ほど見ていると、突然オットが
「どうしてこんなものを見るんだ」
とキツイ声で言う。え?毎週けっこう見てるじゃん。しかも、それまで人が問いかけても、苦情以外はほとんど無言だったオットなのに。
「ねぇ。いったい何に腹を立てているの?何を聞いても返事もしないし、言ってくれなきゃわからないよ」
「お前は、言われなきゃわからないのか」
「あんたはいつもそう言うけれど、いったい、ワタシが何をした?あんたの気に触るようなこと、今日はしてないつもりだけど」
「してないつもり、か」
自嘲気味にそうつぶやき、オットはヒザを抱えて黙りこむ。
こういう態度がまたむかつく。
「でさ、言ってくれないとわからないんだけど」
「・・・・・・例えばだ。いまTVのチャンネルを勝手に変えただろう。オレに断りもなく」
「見たい番組があったの?A姫ってわけはないよね?だったらワタシがチャンネルを変える前に『今日はアレを見たい』って言ってくれればいいのに」
「今日の番組なんか知らない。何をやってるか」
だったら、いつも見てる番組でもいいじゃないか。そう思いながらもオットに今日の新聞とリモコンを渡し
「はい。じゃあ新聞を見て、好きな番組に変えて頂戴」
と、録画番組を止める。画面はまた、見る気もないA姫に戻した。
でも、オットは「いらないっ」と新聞を押しやり、ヒザに顔を埋めるようにしてふてくされた
今日もまた、食事は中断。
いくらがんばって作ろうが、そそくさと済ませて自分だけ立ち上がるか、不味そうに平らげるか、もめて中断するか。うーん、どれも選択されたくないな、作る立場では
「でも、TVを見る前からずっと機嫌が悪かったと思うけれど、TV以外の理由はなんなの」
オットは応えない。しばらくして
「オレは昨日からしんどいって言ってるだろ。それでも家庭サービスをした。だから気晴らしに趣味へ出かけようと思ったけれど、お前にまたイヤミを言われるのが嫌だから諦めた。オレは気晴らしもできないんだよ」
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