仕事のかたがついた翌々日。
オットは片付け物をしたあと、仕事仲間のところへ行くと言って出かけた。そしてかなり時間が経ってから、赤い顔をして戻ってきた。どうやら帰り際に飲んで来たらしい。
そして夕食時、突然
旅に出たい」と言う。
「どこへ
「どこかへ。実家も帰りたいし」
「いつからいつまで?」
「明日から。いつまでかは決めてない」

翌日、散歩を済ませたオットは着替えをバッグに詰め込み、車で出ていった。まさかとは思うけれど、念のため「毎日どこにいるかだけはメールしてきて」と言って送り出す。オットはうなずき、出て行った。

一人で居る家は、がらんと広い
でもその広さに見合う開放感がある。
気も晴れ晴れ。と言いたいところだが、ここしばらくの反動か、ぐったり疲れてしまう。食事もいい加減だし、風呂をわかして入るのも面倒。犬の散歩以外は外に出ることもなく、何をする気にもならず、最低限の仕事をした後はひたすらゴロゴロしていた。

オットからは日に2度ほどメールが来る。
どうやら実家近辺の観光地を回っているらしい。
しかし「薬をやめたのでイライラする。ケンのある表情が自分でもわかるから昔の友人にも会えない」と書かれていた。
薬をやめたぁ
そのくせ酒は飲んでいるのだろう。そのまま車を運転したり、海へ突っこんだりしなければいいが。
と、連絡が来るにしろ、気がかりでくつろげない

家を出てから3日目になって、オットの仕事の用件で電話がかかってきた。私には即答しかねることだったのでメールを打つ。しかし返事が来ない。
思いあまって電話をかける。すると「いま実家に着いたところだ」と、かなり不機嫌な声で返答される。電話がイヤなら、メールの返事ぐらいしてくれよ
用件を伝え、「こうこうだから。で、いつ帰ってくるの?」と聞いたときも「わからんっ」。
まぁいいわ。伝えることは伝えたから、あとは好きにしたら。

そう思っていると、また仕事先から電話があり、私のわかる範囲で説明すると納得されたので、再び「用件は片が付いたから、ゆっくりしてきてください」とメール。
するとしばらくして、な、なんと
今日、夕方には戻る」って。

げげー早すぎるっ。どうしてもっとゆっくりしてこないの。
しかも今日は、ワタシは趣味の習い事がある日だ。今日はオットも居ないことだし、なりゆきでお稽古仲間と食事に出かけようとか思っていたのに。
その旨を「ひょっとして食事に出るかもしれません。よって食事の用意はしてません」とメールし、とりあえず風呂の用意だけして出かけたワタシ。
でも、仲間の都合がつかなかったので、午後8時過ぎに戻ると、オットはすでに風呂から上がり、うどんを茹でているところだった。

「おかえり」
「なんだ、飯を食いに行くんじゃなかったのか」
「仲間の都合が悪くて帰ってきたよ。そっちもえらく早かったのね
「お前からメールをもらったときは、すでに帰りの高速へ乗ったところだったし」

話を聞いてみると、実家へ帰ったらお義母さんの体調が良くなかったらしい。検査結果は何事もなかったのに、たぶん年齢から来るものもあるのだろう。
お義父さんは相変わらずで、妻の不調や息子の病気をどう見ているのか知らないけれど、「数年前から音信不通のいとこがいるので、どうしているか見に行きたい。連れて行ってくれ」とオットは頼まれた模様。
だから実家へは一晩滞在しただけで、翌朝は車で2時間ほどかかる町へ行き、お義父さんの20年ほど前の記憶と住所を頼りに探し回ったらしい
結局、いとこは亡くなっていて家もなく、両親に昼食をご馳走して自宅まで送り届け、そのまま我が家へ帰ってきたようだ。

実家へ帰っても、ぜんぜんのんびりできてない。食事もその辺にあるもので済ませたとのこと。お義母さんが不調だからそれは仕方ないにしても、久しぶりに帰った、しかもメンヘラーな息子がくつろぐ間もなくドライブのお供をさせるお義父さんって・・・。

結局は、実家でもそんなだったから、一泊だけで帰ってきたんじゃないんだろうか。
オットは「お前が仕事のことを聞いてくるから帰ってきた。メールをもらったときは、もう高速に乗ってたし」と言うが、まったく無関係でもないだろう。

朝から運転ばかりして疲れたのだろう
オットはうどんを食べ終えると早々に爆睡した。


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