結局は、自分で作ったカレーもほとんど口にしないまま、荒れて終わった火曜日。
翌水曜日は、5時過ぎに目を覚ましたオット。
早朝覚醒? 睡眠薬の効きが良くないらしく、眠れないのか。でも、毎日横になるやいなや、いびきはかいてるけど。

犬の散歩へ行って、7時過ぎには車で出て行った。
たぶん家にいるのがイヤなのだろう。どこへ行ったのかはわからないけれど、ちょっとでもリフレッシュして帰ってくればいいなと思っていた。
この日、私は昨日鍼を打ってもらったせいか、疲れがたまっているのか、起きられなかった。ようやく10時過ぎに目を覚まし、仕事や家事を片付ける。


オットは、昼を過ぎても帰らない。
ちょうど動き出した企画が2つあるし、今度の祝日には義兄の法事もある。しかも趣味のことでちょっとトラブルがあり、もめ事を解決する案件が進みつつある。
これだけの予定があるから『「家族力」がうつから救う』に書いてあった「予定を作る」の条件はありすぎるほどだから、早まった真似はしないだろう…。
それでも夕方になり、ちょっと心配になってきたころ、オットの仕事仲間から電話があった。パニック障害の経験がある人だ。彼女は私と同年代なせいもあり、ワタシのことも気遣ってくださる。ありがたい。
そこでオットに電話をかけてもらうようお願いした。
どうせワタシがかけても、出ないだろうから
快く受けてもらえ、かけてくださった。が、残念ながら車の運転中で出なかったそう。またこっちに連絡をくださって「すいませんでした」と礼を言っていると、車の音がした。噂をすれば、だね

「お帰り」と声をかけると、なんだか機嫌がいい。たぶん気分転換してきたんだろう。ほっとした。
が、夕食の時にテレビを早送りしたのが原因で、また落ちてしまう。
しまった!チャカチャカする音が堪えたんだ。謝って、あわててテレビを消したけど、遅かりし。オットは「ばあさんの掃除の音よりはマシやけどな」と言いながら耳をふさぎ、表情は真っ暗である。
それから、また愚痴とバイクの話が始まった。

けれども夜の薬が効いてきてもうろうとしてきたので、寝室へ上がらせる。


そしてまた一日が経った。木曜日、一昨日のことである。
オットは朝から大工仕事をしていた。どうも調子が悪くなると、何かをせずにはおられないよう。趣味で使う物を「難しい」と言いながらトンカチやっていた。

陽が落ち、おがくずまみれで上がってきたオット。くたびれた感じなので「明日、温泉でも行こうか」と声をかける。
な、なんと
昨日、行ってきたという。くそー人が心配してたときに。
それからオイル交換をして、車屋さんで世間話して帰ってきたらしい。
そして…。おそらくバイク屋にも寄ってきたんだと思う。


犬の散歩へ行き、風呂へ入ってもらっている間に夕食の支度をする。
オットがこの前マッコリを買ってきたので、それに合わせて韓国風の料理だ。
でも、やっぱり食は進まない。
無理強いしてもいけないので、片付け始める。昨日テレビがうるさかったから、「これから片付けるのやかましいし、もう寝てきたら」というと「大丈夫」というので茶碗を洗っていたが、案の定「うるさい。当てつけか。もっと静かに洗ってくれ」と言う。
だから断ったのに…できるだけ静かに洗ってるのに…。

ここからもう歯止めがきかなくなる。
「なぜオレが自分でローンを組み、支払いの目処も立ててバイクを買うと言っているのにお前は反対するんだ。昔からの夢をやっと一つずつ叶えていこうと思っているのに。だいたい、お前は自分の道楽で茶碗を買ってるけどな、それは良くてオレのはダメなのかよっ。こんな茶碗、全部コワすぞ

確かに、ワタシは食器を買うのが趣味である。けれども自分の小遣いで、ささやかに買ってるだけ。数ヵ月に1個ぐらいのものだ。それを150万円ほどもするバイクと一緒にされちゃなぁ。
おまけに仕事や趣味の懸案など、問題をいっぱい抱えているオット。実家への仕送りもあるし、いま持っている趣味もけっこう高くつくのだ。
もちろん家のローンもまだまだ残っている。
「いま、仕事も趣味もいろいろある中で、調子があまり良くないし。そんな状態でまた新しいことを始めたら、ストレスがかかって良くないよ。それに仕事や趣味の懸案にお金もかかるし、義母さんの仕送りもあるでしょ。そんなときに、ローンを組んでまでバイクを買うのはやめてほしい」

そう言うと、わなわな震えるほど怒る。
「何でもお前の言うとおりにしないといけないのか。こんなもの、もういらないっ
オットは、置いてあったバイク雑誌を放り投げた。