たまにこんな相談を受けます。
「あまり余計なことをこの子にしたくないので、必要最小限のワクチンだけで済ませたいのですが」
気持ちは分からなくはありません。
繰り返しますがワクチンにもデメリットはあります。
ですがメリットとデメリットを天秤にかけて、メリットが大きいと判断されるからワクチンが接種されるのであって、それを選ぶのは親の判断ということになります。
でも「必要最小限のワクチン」と言いますが、では「必要でないワクチン」ってあるのでしょうか??
そもそも何故ワクチンを接種しなければならないのか、皆さんはどうお考えですか?
こういう質問をされたときに僕は迷わずこう答えます。
「死なせないため」
死ぬ病気から命を守るためにワクチンを接種するのです。
逆に言えば、死なない病気ならばワクチンなんていらないと僕は考えます。
なので僕は個人的にはロタワクチンはあまり必要ないと思っているし、実際に自分の子供にも接種させていません。
人間にとって最もつらいことってなんだと思いますか?
それはわが子を亡くすことだと僕は思います。
当然ながら自身の経験からです。
死ぬ病気からわが子を守りたい、そう願うのは親として当然の、必須の考え方でしょう。
ですから、ワクチンとは「病気にかからなくするため」なんて生易しい理由ではなく、「死なせないため」に接種するものなんだと認識しましょう。
例を挙げましょうか。
・三種混合・四種混合
この中で一番怖いのは百日咳です。
1歳未満の乳児が感染すると呼吸停止を起こします。
死ぬ病気です。
・BCG
乳児が結核に感染すると高確率で結核性髄膜炎を引き起こします。
死ぬ病気です。
・B型肝炎
肝炎を発症するといずれは肝硬変そして肝がんへ進展します。
今の医学ではガンを治すことはできませんから、遠からず死にます。
・MR
とくに麻疹は、かなりの頻度で脳炎を引き起こします。
死ぬ病気です。
・水痘
あまり怖がられない水痘ですが、まれに脳炎を引き起こします。
だからこそ定期予防接種になったのです。
脳炎になれば命に関わります。
・おたふく
おたふくには様々な合併症がありますが、一番厄介なのが難聴です。
この難聴は一生治りません。
死なないまでも、一生続く障害が残るわけです。
・日本脳炎
読んで字のごとく、脳炎を起こします。
脳炎になれば死ぬか、助かっても一生残る障害を残します。
・インフルエンザ
風邪の一種ですが、重症化すると肺炎や脳症を引き起こします。
毎年多くの方が命を落としています。
・子宮頸がん
20~30代女性の患者・死者が急増しています。
働き盛り、子育て盛りのママを襲う、恐ろしい病気です。
ある種のウィルス感染が原因であることが分かっており、ワクチンが開発されました。
・ヒブ、肺炎球菌
言うまでもなく細菌性髄膜炎は我々小児科医が最も恐れる病気であり、ワクチンを長年待ち望んでいました。
これにより髄膜炎の患者が激減し、当然ながら死亡者も激減しました。
、、、と、このように、死ぬ病気だからこそワクチンで防がなければならないわけです。
死ぬ病気だからこそ人類は必死でワクチンを開発するのです。
現在もエボラ出血熱に対するワクチンの開発がすすめられています。
逆に言えば、死なない病気に対するワクチンなんて開発されないわけです。
ロタなどは日本ではまず死ぬことのない感染症ですが、医療水準が低く衛生状態の悪い途上国では致命的になります。
だからワクチンが開発されたのです。
子供の命を守りたい。
救える命は絶対に救いたい。
我ら医療従事者や、果ては僕らのような「天使パパ」「天使ママ」達の、このような切なる思いがこもっているのです。
だから「ワクチンは接種させない」などとしたり顔で偉そうに言う親、その親の言うことはイコール「自分の子供が死んでも一向に構わない」ということなのです。