MRワクチンが不足しているという話は前回の記事で書きました。
繰り返しますがこれは明らかに国の失策です。
ワクチンの増産には数カ月かかるわけで、こうなることを事前に予測していれば8月にワクチンが不足することはなかったのです。
ポリオの時と同様に「犠牲者」がこれ以上増えない事を祈るばかりです。
(ここでいう「犠牲者」とは、奇形をもったお子さん本人そしてその両親です)
そんな中、ついに先週川崎市から当院にも通達がきました。
大人へのMRワクチンの接種対象は、
「妊婦の夫に限る」
とのこと。
つまり、妊婦の夫以外は接種してはいけない、妊婦の夫以外は風疹に罹っても仕方がない、という意味だと僕はとらrました。
あまりに非人道的な方法だと思いませんか?
国の失策でワクチンが不足してしまったことは百歩譲って仕方ないことだとしましょう。
では足りないワクチンをどうするか、行政が出した答えは
「優先順位を決めて、順位の高いものから接種させる」
という方法でした。
僕が一番危惧していた方法を、行政はまんまと選択してしまったわけです。
繰り返しますが、先進国としてはありえないほどの流行をしている風疹を食い止めるためには、対象者すべてが一気にワクチンを接種しなければ意味がありません。
「妊婦の夫」だけ接種させたところで感染拡大は防げません。
また、その妊婦は夫から感染させられるリスクは減りますが、外出すれば風疹患者とどこで接触するか分かりません。
最低限せめて「妊娠予定の女性」も接種対象として、妊婦さんが安心して生活できるよう配慮しないといけないのではと思います。
最低限ですよ。
ポリオの時にもそうでしたが、国は何故海外からのワクチン緊急輸入を行わないのか。
賛否両論(「否」が圧倒的でしたが)ありましたが、神奈川県は県として緊急に不活化ポリオワクチンを輸入して接種をしたことがあります。
行政が動けば、そんなこと簡単なことです。
過去にだって、新型インフルエンザが流行した時には国は緊急措置として海外からワクチンを緊急輸入しました。
(あの時は接種対象者に優先順位をつけられましたが・・・)
市からの通達には、
「ワクチンの供給が安定し次第、この措置は解除する」
とありました。
じゃあいつ供給が安定するの?
つまりそれは9月以降ってことですよね。
緊急輸入はしないで国内での増産ワクチンの完成が9月以降ですから。
そんなに待ってて良いのでしょうか??
当院はさっそく海外からのワクチン輸入の手続きを始めます。
具体的にはMMRワクチンということになります。
接種は自費で価格は5000円ほどになると思います。
おそらく日本中の医療機関から注文が殺到しているので、はたして納品可能か分かりませんが、出来るだけの事はしなければなりません。
だって国が守ってくれない女性、我々医者が守らなければ誰が守るんですか!!
自費接種の負担は大きいですが、国が守ってくれない以上、ご自身の判断で自己防衛していかないとならない、それがワクチン後進国の国民の生きる道です。
悲しい現実です。