「世界」最新号(2009年2月号)に載っていたハバーマスの「破綻のあとで」というインタビュー記事を読む。彼の主張を簡単にまとめてみる。
金融至上主義が破綻し、そのツケを社会的弱者が払わされている。このような事態は、市場に対する規制をあまりにも取り払いすぎてしまったことに起因している。90年代、市場が国家を越えはじめたときに、本来ならば政治的行為能力も国家を越えて拡大しなければならなかったのである。そこでこれからは、「超国家的」な政治力が「世界内政」のようなかたちで市場を規制し、公共の利益を守らなければならない。そのためにも各国家は徐々に統合していかなければならない。
市場に対する規制が必要だというのは理解できるが、そのために世界政府のような機関をつくろうというのは、インタビュアーが繰り返し指摘しているように、あまりにも非現実的だろう。それに、公益は必ずしも政府によってのみ守られなければならないものでもない。事実、企業が積極的に公益を守っていこうという動きが、民間の側から出てきつつある。
原丈人は、「voice」最新号(2009年2月号)のなかで公益資本主義という新しい概念の説明をしている。市場万能主義、株主至上主義を基盤とする金融資本主義を強く批判した後、彼は金融資本主義に対抗する資本主義として公益資本主義を紹介する。原によれば、公益資本主義とは「会社の事業を通じて、公益に貢献すること」、「会社の事業を通じて、会社が関係する経営者、従業員、仕入先、顧客、株主、地域社会、環境、そして地球全体に貢献すること」こそが価値として認められる資本主義のことである。さらにこの公益資本主義の指標として、彼は公平性、持続性、改良改善性の三つを挙げている。
株主への貢献ではなく、社会全体への貢献を企業の評価基準にしようという流れは、これから少しずつ広がっていくのではないだろうか。たとえば、ダブルボトムライン(DBL)という非公開株式市場がある。ボトムラインとはバランスシートの一番下の行、つまり収支決算の最終結果のことである。ダブルボトムラインとは、金銭的な成績に加え、社会に対する貢献も考慮したうえで投資していこうという姿勢のことを示している。このダブルボトムラインがより一般的になれば、公益資本主義は実現にさらに一歩近づくことになるだろう。
原も言っているように、社会全体のために企業を運営しようという考え方は、本田宗一郎や井深大といった日本の経営者の先達がつくった経営理念の中に往々にして見られるものである。これからの日本の企業が公益資本主義を体現するようなビジネスモデルを生み出すことができたとき、なかなか面白いことがおこるんじゃないかと個人的には期待している。
関連サイト:アライアンス・フォーラム財団
(原丈人が代表理事を努める財団。公益資本主義の研究も行っている。)
注)ダブルボトムラインに関する情報は2004年発行、『社会起業家』(斎藤槙、岩波新書)より。その後の展開はフォローしていません。