マッキンゼー社のレポート作成責任者、バーバラ・ミントの『考える技術・書く技術』を読む。本書はミント女史が主要コンサルティング会社、また一流企業に対してビジネス・ライティングの指導をしていたときに使用していた教科書の改訂版。

評判どうり、非常に充実した内容。コンサルティングに関わる者のみならず、論理的な文章を書くことを要求される人たち、たとえば大学生や大学院生にも読んでもらいたい。この本を読むことで、論理的に思考し問題解決へと至るためのフレームを学ぶことができる。また、相手にわかりやすい文章を書く技術を身につけることができる。

文章を構成していく際の基本的な流れは、「状況→複雑化→疑問→答え」を導入部に置き、あとは各部をピラミッド型に配置していくこと。つまり冒頭で答えを述べてしまい、あとはその答えをサポートしていく証拠を積み上げていくのである。これは基本的にはICUのELP(English Language Program)で習った論文作法と同じ。ただ、プロのビジネスマン向けに書かれた本書のほうが、はるかに高度な内容に踏み込んでいる。

なお、このような文章構成はフランス(少なくともフランス文学の世界)では採用されていない。フランスの場合、冒頭で疑問を投げかけ、答えはいちばん最後までとっておく。なぜなら、いきなり答えが分かってしまったら詰まらないから。フランス人の知り合いが「論文はラブレターと同じなんだ。相手を最後まで引きつけないといけないんだよ」というようなことを言っていた。フランスの場合、公的な文章でさえも読み手の感性に訴えかけようとするのかもしれない。

個人的には、フランス型の文章構成は嫌い。必要な情報のみを取得したいときに、最後まで文章を読まなければ答えが分からないというのはあまりにも効率が悪い。また自分で文章を書く場合でも、最初に結論をもってこないと文章全体の一貫性が非常にとりにくい。

訳者あとがきにも書いてあるように、一般的な読者は第一部「書く技術」、第二部「考える技術」を熟読し、第四部「表現の技術」に軽く眼を通す、といった読み方をするのがいいだろう。それだけでも書き方や考え方に対する姿勢が大きく変わるはずである。ビジネスマン向けの教科書ということもあり、たしかに簡単に読みきってしまえる本ではない。しかし、真剣に取り組むだけの価値は十分にある。僕も折に触れて本書を読み返し、理解を深めていきたいと思っている。