土曜日なのに大学の図書館です。現在午後三時。ようやくバルトの『明るい部屋』を読み終えました。ブログのアップをしようと思ってパソコンを開いていたら、ついさっき中年の女性がやってきて「図書館でネットしたいんでけどよく分からないから、よかったらセットアップ手伝ってくれない?」と頼まれた。けっきょく僕もよく分からなかったんだけど、他人にでもとにかくよく声をかけるというのはここ、フランスならでは。普通を街を歩いていても、多い日には三回くらい道を尋ねられる。こちらもけっこう自然に教えてあげられたりするので、ちょっとうれしかったりもする。


フランスという国は、確かにシステム的にいろいろと遅れている部分もあるけれど、ただ街を歩いていて思うのは、人々がとにかくおおっぴらだということ。地下鉄に乗っていても、とにかくみんなよく話す、静かになるひまがない。さらに突然アコーディオン弾きやギター弾きが乗り込んできて、通路の真ん中で曲を演奏しはじめる(これはもちろんお金をもらうため。演奏したあとに集金袋を持って通路を一往復する。実際にお金を入れる人は乗客の一割くらい)。


メトロのなかでのパフォーマンスは、僕が観察した限り大きく分けて二種類ある。ひとつは、前述したように音楽を演奏するタイプ。使用する楽器はアコーディオンがいちばん多くて、次がおそらくギター。ただこないだは、カラオケ装置を持ち込んでマイクを使ってボンジョビの歌を熱唱するという、なかなか強引なおじさんもいた。イタリア系の観光客が盛り上がって拍手とかしていたから、それはそれで成功だったんだろう。


楽器が弾けない人は、20秒くらいの短い口上を述べた後で通路を回ることになる。電車が駅に着き、乗客の乗り降りも終わり扉が閉まったところで彼らはおもむろに通路の真ん中に立ち、「マダム、ムッシュー、私は食べるものもない哀れな男です・・・」とはじめるわけである。この口上にもいろいろとテクニックがあるらしく、普通は「食べ物もきるものも職もないからお金をください」という程度なのだが、こないだ聞いてて面白かったのは、「お金でもクーポン券でもいいから私に恵んでください。お金もクーポン券もなかったら、あなたの笑顔でもかまいません。笑顔はただで、しかも人に幸せを分け与えるのです。さあ、マダム、ムッシュー、この哀れな男に微笑みかけていただけませんか」というもの。こういうユーモアがある人には、思わずコインでもあげたくなってしまいます。

'08/10/25(昼)